2009年1月-6月 新規株式公開9社

企業が新たに株式公開するIPOが急減している。2009年1月ー6月は9社と前年同期より15社減った。バブル崩壊の影響を受けた1992年上期の3社に次ぐ低水準。昨年秋以降の急速な景気悪化で株式公開を見送る企業が相次いでいる。証券取引所の上場審査が厳しくなっていることや、上場に伴い負担が増える割に資金調達面などのメリットが乏しいことも一因だ。
(日本経済新聞2009年6月23日17面)

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景気悪化の影響もさることながら、昨今新興市場に上場するベンチャー企業に不祥事が相次ぎ、証券取引所の上場審査が厳格化していることもIPO急減の大きな原因と考えられます。

5月15日の経済教室で、大阪市立大学の翟教授が、は2001年-2006年に新規公開した企業について分析を行い、

1.新興市場上場会社の業績は公開の1年前を頂点に逆V字型の推移を示している
2.上場後の公開企業の相対的投資パフォーマンスは、新興市場上場会社は際立って悪い。

との分析結果を示しています。

翟教授は新興市場の上場企業の質が低い原因を次のように説明しています。

「公開企業の質が低い原因には3つある。
第1が、高い公開価格での新規公開を実現させようと、費用の繰り延べや収益の繰り上げ計上で公開前の経営業績をかさ上げするという「公開前のお化粧」である。
第2が、新規公開で調達した資金を寝かせたり、不必要な負債返済や無謀な事業拡大に使ったりする非効率的な資金使途である。
第3は、新規公開後、創業者利益を手に入れ、持株比率が小さくなった経営者が経営努力を怠る放漫経営である。」

さらにもう一つ付け加えるなら、もともとベンチャー企業の事業には大きなリスクがあり、成功確率が低いけれど、うまくいけば大きな成長が期待できるので、ハイリスク・ハイリターンを望む投資家がそれなりに覚悟して資金を投ずるべき対象であるということが言えます。

つまり、成長性については誰にもわからない(だからこそ一攫千金の夢を追える)のがベンチャー企業で、市場がいくら厳格な審査をしたところで解決すべきものではありません。

新興市場で問題企業が続出するのは、駄目になる企業が多いからで、それ自体は必然と言えます。

証券取引所や証券会社は、「業績が安定的に成長するかどうか」に審査の重点をおくより、ハイリスクであることを言明した上で、IPOする企業には十分な情報を提供させ、その情報の質を高めることに注力すべきであると考えます。

あとは投資家は自己責任で投資を行えば良いのです。駄目な会社は、悪さをする前に、とっとと上場廃止にする、という点も重要ですね。

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