「創造的破壊」の先兵たれ – 伊藤邦雄

・未曽有の危機下こそ、ベンチャーの出番
・一部の起業家の挫折のみで全否定するな
・公開偏重のVCの出口戦略、多様化急げ

(日本経済新聞2009年7月22日27面 経済教室)

【CFOならこう読む】

今後は、こうした大企業の無形資産経営と起業家とを結びつける道を考えるべきだろう。
その一つが「カーブアウト経営」だ。大企業に眠る技術や知的財産を社外に「カーブアウト」(切り出し)し、その事業化を起業家に委ねる。従来、大企業の特許取得は、自社の製品と技術を守るための受け身的なものだった。今後は特許の積極利用を経営戦略に位置付ける必要がある。当初は自社の知的財産の外への切り出しに大企業経営者は抵抗感があるかもしれない。
だが、現状の不本意な企業価値を見れば、その余裕はない。巨木だけでは森は枯渇するが、若木も滋養を与えないと大木に育たない。巨木と若木の「共生」が必要なのだ。(前掲紙)

伊藤先生のおっしゃるとおりだと思います。ただし現実的には相当に難しい面があるのも事実です。

大企業の保有する知的財産を社外の起業家とマッチングするためには、大量の経営者のストックが必要です。しかし、日本社会はいまだに終身雇用を是としており、経営者が圧倒的に希少な資源となっています。この辺は教育に委ねるほかなく、伊藤先生の責任も重大であると言えます。

もうひとつ決定的に重要な点が税制です。

「カーブアウト」の時点では、適格分割でいける余地があるものの、IPO時には、親子上場の問題もあり、大企業が保有する株式は株主に分配する(スピンオフする)のが望ましいのですが、これを無税で行うことができません。

この点、組織再編税制制定当時から問題点として指摘されていたものの、立法担当者は、「ニーズがない」の一言で、いまだ手当がなされていません。

ニーズはありますよねぇ、伊藤先生。

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