国際会計基準、有価証券時価評価ルールの改定案

日本が導入を目指している国際会計基準で、株式や国債など有価証券の時価評価法が変わる。国際会計基準審議会(IASB)が14日、2012年1月1日以降の年度を対象にしたルール改定案を公表した。多額の株式や国債を保有する日本の銀行や生命保険会社の運用にどんな影響が出るか、市場関係者の関心も高い。
(日本経済新聞 2009年7月29日 7面)

【CFOならこう読む】

「日本の現行ルールでは企業が保有する有価証券を3つに区分している。時価評価しなくてすむ代わりに事実上売買できない「満期保有」、満期まで持たない代わりに一定の含み損が発生したとき損失計上する「売却可能(その他)」、いつでも時価する「売買目的(トレーディング)だ。国際会計基準の改定案は2区分に簡素化。
日本が導入すると「売却可能(その他)」を廃止する必要が出てくる。」(前掲紙)

日本経済新聞 2009年7月29日 7面

日本経済新聞 2009年7月29日 7面

「売却可能(その他)」の区分がなくなる代わりに、時価評価を選択するかしないかを選択できるようになります。これは例えば政策投資株式(持ち合い株式)は、事業上のメリットがあって保有するので、そのメリットは営業損益に落ちてくると考えられるのに対し、売買目的で保有する有価証券は、時価が上がれば儲けが出るし、下がれば損失が出るだけのものです。したがって前者はそもそも時価評価になじまないので、時価評価を選択すべきではないと考えられるのです。

この点については、次のように国内の大手生保等から反対の声が出ています。

草案は、企業が保有株式の純損益上の扱いについて、(1)株価の値動きをすべて反映させる(反映型)(2)全く反映させない(非反映型)――のいずれかを選択することを求めている。影響がとくに大きいのは国内の大手生保だ。
国内生保は外資に比べて株式運用の比率が高い。日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の国内大手4社でみると、08年3月期から09年3月期にかけ、国内株式含み益は約5兆6千億円減った。この全額が、純損益に反映したとすると、各社とも純利益は吹き飛び、大幅な赤字になる。

草案では、時価を反映しない方式の採用も可能だ。ただ、その場合は生保の主な収入源のひとつである株式配当や、株の売却益を利益に計上できなくなる。国際会計基準を日本が受け入れるかどうかは12年に判断することになるが、大手生保幹部は「採用されれば株式運用が事実上できなくなってしまう。再考を強く求めたい」と話す。」(朝日新聞2009年7月17日)

主たる目的が運用にあるのなら、当然時価評価を選択することになると思います。

償却原価の区分は、まさにプレインな債券をここに分類するために設けられたものと思われます。ただし、契約上確定したキャッシュフローを獲得することが保有の目的ではなく、債券の時価に賭けることが保有の目的であるなら、”今いくらで売れるか”という基準、すなわち時価で評価すべきであるということになるのです。

償却原価を採用するための2つの要件、「貸付金の性格をもつ」と「金利収入を目的とする」はこの点を判定するために設けられたものと思われます。

【リンク】

なし