IFRS、有価証券時価評価ルール改定案その4

国際会計基準審議会(IASB)が検討している会計基準の改定案の概要が14日明らかになった。日本固有の持ち合い株については、投資先企業から受け取る配当金の純利益への計上を容認する見通し。年金の積み立て過不足を純利益に反映させる暫定合意も見直しを検討する。国際会計基準の強制適用を視野に入れる日本の要望にIASBが歩み寄った格好だ。
(日本経済新聞2009年10月15日14面)

【CFOならこう読む】

IFRSの改定案は従来次の通りでした。

1 毎期の時価変動分や売却損益をすべて純利益に計上する
2 純利益に計上しない場合は配当も含めて「包括利益に計上する」

のどちらかを選択しなければならない

IASBはこれを一部改め、2を選択した場合にも、受取配当金は

「投資に対する適切なリターン」(IASB トゥーディー議長 前掲紙)

として純利益に計上することを認められるようになる、ということです。

しかし、投資のリターンだけでなく投資のコストも考える必要があるでしょう。斉藤静樹氏が言うように、

「保有している間に株価が下がった分は投資のコストになる」(経営財務NO,2929)

にも関わらず、これが純利益に計上されないのは大問題だと思います。

そもそも配当金とキャピタルゲイン(ロス)の原資は1つであり、配当は前者は純利益に後者は包括利益にと扱いを異にするのは理論的ではありません。

キャピタルゲイン(ロス)については、

「30年間保有していた持ち合い株をある日突然売却したとして、それが純利益に計上されるとすれば当期の本業で稼いだ利益が見えなくなる」(IASB トゥーディー議長 前掲紙)

という理由で純利益計上は認められないということです。

しかし、これについても斉藤静樹氏は、

「OCI(その他の包括利益)に行ったまま純利益に戻らないということは、コストの一部がどこかに消えたまま成果だけが出ている状態です。どの期のコストかは決められませんが、清算時にまとめて調整されるべきものです。」(経営財務NO,2929)

と言っており、これが正論だと僕も思います。

それにしてもこんな場当たり的にあちこちの意見をつぎはぎして作られるIFRSの品質はどうやって保証されるのでしょうか? 特にIFRSによる会計が経営の羅針盤としての役割を果たしていけるのか、はなはだ心もとない気がします。

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