IFRSと投資銀行

金融庁は11日、国際会計基準(IFRS)に基づく有価証券報告書の提出を認める内閣府令を交付した。日本は2015年にも上場企業の連結決算に国際基準を強制適用する方向で検討している。法律面の環境が整うことで、
今後企業の法人準備が本格化する。トヨタ自動車など一部の大企業が採用している米国会計基準は2016年3月期に廃止になる見通しだ。

(日本経済新聞2009年12月12日7面)

【CFOならこう読む】

内閣府令の概要は次の通りです。

「1.任意適用の対象会社(連結財務諸表規則第1 条の2、開示府令第2号様式記載上の注意(59)等)国際的な財務活動又は事業活動を行う国内会社で、次の(1)及び(2)の要件を満たす会社(「特定会社」という。) は、指定国際会計基準により連結財務諸表を作成することができる。

(1) 次の要件のすべてを満たすこと
➀発行する株式が、金融商品取引所に上場されていること
➁有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確保するための特段の取組みに係る記載を行っていること
➂指定国際会計基準に関する十分な知識を有する役員又は使用人を置いており、指定国際会計基準に基づいて連結財務諸表を適正に作成することができる体制を整備していること

(2) 次の要件のいずれかを満たすこと
会社、その親会社、その他の関係会社又はその他の関係会社の親会社が、
➀外国の法令に基づき、法令の定める期間ごとに国際会計基準に従って作成した企業内容等に関する開示書類を開示していること
➁外国金融商品市場の規則に基づき、規則の定める期間ごとに国際会計基準に従って作成した企業内容等に関する開示書類を開示していること
➂外国に資本金20億円以上の子会社を有していること

(3)特定会社は、(1)の➁及び➂の要件を満たしていれば、翌年度以降も引き続き、指定国際会計基準により連結財務諸表を作成することができる。」
(「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を 改正する内閣府令等の概要(国際会計基準の任意適用関係) 」金融庁HP)

ところで、IFRSとは誰のために存在するのでしょう。

先日、「キャピタリズム」という映画を見ました。ドキュメンタリー作家であるマイケルムーアの最新作です。

この映画は米国の投資銀行とブッシュ政権の深い結びつきを批判し、マイケルムーア自らがあちこちの主立った投資銀行の建物の回りを、”犯罪現場につき立ち入り禁止”と書かれた黄色いテープを覆う
シーンで終わります。

米国の投資銀行としては、世界中の財務諸表がひとつの会計基準で作成されていれば都合がよいはずで、IFRSも彼らの便宜ために存在しているのかも知れません。

そもそも会計というのは、実務慣行を要約するものであるはずなのに、IFRSは極めて演繹的に作成されています。

しかもその設定主体であるIASB はたった15名で運営されおり、そのうち8名は英米と旧英邦の方々です。一体全体誰の利益を代表しているのでしょうか?

映画「キャピタリズム」は民主主義の重要性を訴えますが、僕はむしろ市民主義こそが重要であると考えます。普通の市民が希望を持てない社会は市民の力で変えて行かなければなりません。

【リンク】

「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を 改正する内閣府令等の概要(国際会計基準の任意適用関係)」[PDF]