第三者割当増資、2月から規制強化

金融庁は2月から、上場企業が第三社割当増資を実施する際の情報開示規制を強化する。一株の価値が大幅に薄まるか、経営支配権が突然移る増資を対象に資金使途や出し手の説明を義務付ける。開示内容に虚偽があれば課徴金支払いを命じる。投資家の利益を損なう増資を厳しくけん制するのが狙いだ。
(日本経済新聞2010年1月18日16面)

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第三者割当増資を行う場合に有価証券届出書(臨時報告書)に次の記載が必要となります。

1【割当予定先の状況】
次のaからgまでに掲げる事項について、割当予定先(第三者割当により提出者が割当てを予定している者をいう。以下この様式において同じ。)ごとに当該aからgまでに定めるところにより記載すること。
a 割当予定先の概要 次の(a)から(d)までに掲げる割当予定先の区分に応じ、当該(a)から(d)までに定める事項を記載すること。(d)に定める事項については可能な範囲で記載すること。
(a) 個人 氏名、住所及び職業の内容
(b) 有価証券報告書提出会社 名称、本店の所在地及び届出書の提出日において既に提出されている当該割当予定先の直近の有価証券報告書(当該有価証券報告書の提出後に提出された四半期報告書又は半期報告書を含む。)の提出日
(c) 有価証券報告書提出会社以外の法人 名称、本店の所在地、国内の主たる事務所の責任者の氏名及び連絡先(割当予定先が非居住者の場合に限る。)、代表者の役職及び氏名、資本金、事業の内容並びに主たる出資者及びその出資比率
(d) 有価証券報告書提出会社及び有価証券報告書提出会社以外の法人以外の団体 名称、所在地、国内の主たる事務所の責任者の氏名及び連絡先(割当予定先が非居住者の場合に限る。)、出資額、組成目的、主たる出資者及びその出資比率並びにその業務執行組合員又はこれに類する者(以下この様式において「業務執行組合員等」という。)に関する事項((a)から(d)までに掲げる当該業務執行組合員等の区分に応じ、当該(a)から(d)までに定める事項とする。)
なお、割当予定先又は業務執行組合員等が個人である場合における住所の記載にあたっては、市町村(政令指定都市にあっては区)程度の記載で差し支えない。
b 提出者と割当予定先との間の関係 提出者と割当予定先との間に出資、人事、資金、技術又は取引等において重要な関係がある場合には、その内容を具体的に記載すること。また、割当予定先が組合その他の団体であって、その業務執行組合員等と提出者との間に出資、人事、資金、技術又は取引等において重要な関係がある場合には、その具体的な内容を併せて記載すること。
c 割当予定先の選定理由 割当予定先を選定した理由及び経緯を具体的に記載すること。
d 割り当てようとする株式の数 この届出書に係る第三者割当により割り当てられる株式又は新株予約権の目的である株式の数を記載すること。
e 株券等の保有方針 この届出書に係る第三者割当に係る株券等について、割当予定先による保有方針を確認した場合は、その内容を記載すること。
f 払込みに要する資金等の状況 割当予定先がこの届出書に係る第三者割当に対する払込みに要する資金又は財産を保有することを確認した結果及びその確認の方法を具体的に記載すること。
g 割当予定先の実態 割当予定先の株券等について、株主として権利行使を行う権限若しくはその指図権限又は投資権限を実質的に有する者が存在する場合には、その旨及びこれらの権限の内容を具体的に記載すること。また、割当予定先が暴力若しくは威力を用い、又は詐欺その他の犯罪行為を行うことにより経済的利益を享受しようとする個人、法人その他の団体(以下このgにおいて「特定団体等」という。)であるか否か、及び割当予定先が特定団体等と何らかの関係を有しているか否かについて確認した結果並びにその確認方法を具体的に記載すること。

2【株券等の譲渡制限】
この届出書に係る第三者割当に係る株券等についてその譲渡を制限する場合には、その旨及びその内容を記載すること。

3【発行条件に関する事項】
a 発行価格の算定根拠及び発行条件の合理性に関する考え方を具体的に記載すること。
b この届出書に係る第三者割当による有価証券の発行(以下このbにおいて「当該発行」という。)が会社法に定める特に有利な金額又は特に有利な条件による発行(以下このbにおいて「有利発行」という。)に該当するものと判断した場合には、その理由及び判断の過程並びに当該発行を有利発行により行う理由を具体的に記載すること。また、当該発行が有利発行に該当しないものと判断した場合には、その理由及び判断の過程を具体的に記載すること。なお、当該発行に係る適法性に関して監査役が表明する意見又は当該判断の参考にした第三者による評価があればその内容を記載すること。

4【大規模な第三者割当に関する事項】
この届出書に係る第三者割当により次のa又はbに掲げる場合に該当することとなる場合には、その旨及びその理由を記載すること。なお、議決権の数の算出に当たっては、算定の基礎となる株式の数が届出日後のいずれか一の日の市場価額その他の指標に基づき決定される場合には、届出日又はその前日のいずれかの日の市場価額その他の指標に基づいて計算すること。
a 第三者割当により割り当てられる株式又は新株予約権の目的である株式に係る議決権の数(当該議決権の数に比して、当該株式又は当該新株予約権の取得と引換えに交付される株式又は新株予約権(社債に付されているものを含む。) に係る議決権の数が大きい場合には、当該議決権の数のうち最も大きい数をいい、「割当議決権数」という。)(この届出書に係る株券等の募集又は売出しと並行して行われており、又はこの届出書の提出日前6月以内に行われた第三者割当がある場合には、割当議決権数に準じて算出した当該第三者割当により割り当てられ、又は割り当てられた株式等に係る議決権の数(当該第三者割当以後に株式分割が行われた場合にあっては当該株式分割により増加した議決権の数を加えた数、株式併合が行われた場合にあっては当該株式併合により減少した議決権の数を除いた数。以下このaにおいて「加算議決権数」という。)を含む。)を提出者の総株主の議決権の 数から加算議決権数を控除した数で除した数が0.25以上となる場合
b 割当予定先が割り当てられた割当議決権数を所有した場合に支配株主(提出者の親会社又は提出者の総株主の議決権の過半数を直接若しくは間接に保有する主要株主(自己の計算において所有する議決権の数と次の(a)及び(b)に掲げる者が所有する議決権の数とを合計した数が提出者の総株主の議決権の100分の50を超える者に限る。)をいう。)となる者が生じる場合
(a) その者の近親者(二親等内の親族をいう。(b)において同じ。)
(b) その者及びその近親者が当該総株主の議決権の過半数を自己の計算において所有している法人その他の団体(以下この(b)において「法人等」という。)並びに当該法人等の子会社

5【第三者割当後の大株主の状況】
a この届出書に係る第三者割当により割当予定先に株式が割り当てられ、又は割り当てられた新株予約権が行使された場合(当該株式又は当該新株予約権の取得と引換えに株式等が交付された場合を含
む。以下この(23-7)において同じ。)における大株主の状況について、(45)のb及びcに準じて記載すること。
b 割当予定先が大株主となる場合について、「割当後の所有株式数」は、当該割当予定先の割当議決権数に係る株式の数を所有株式数に加算した数を記載すること。
c 「割当後の総議決権数に対する所有議決権数の割合」は、「割当後の所有株式数」に係る議決権の数を総株主の議決権の数に割当議決権数を加えた数で除して算出した割合(小数点以下3桁を四捨五入し小数点以下2桁までの割合)を記載すること。

6【大規模な第三者割当の必要性】
a この届出書に係る第三者割当が4に規定する場合における第三者割当(以下「大規模な第三者割当」という。)に該当する場合には、当該大規模な第三者割当を行うこ ととした理由及び当該大規模な第三者割当による既存の株主への影響についての取締役会の判断の 内容について、具体的に記載すること。
b 大規模な第三者割当を行うことについての判断の過程(経営者から独立した者からの当該大規模な第三者割当についての意見の聴取、株主総会決議における株主の意思の確認その他の大規模な第三者割当に関する取締役会の判断の妥当性を担保する措置を講じる場合は、その旨及び内容を含む。)を具体的に記載すること。

7【株式併合等の予定の有無及び内容】
提出者の株式に係る議決権を失う株主が生じることとなる株式併合その他同等の効果をもたらす行為が予定されている場合には、当該行為の目的、予定時期、方法及び手続き、当該行為後の株主の状況、株主に交付される対価その他当該行為に関する内容を具体的に記載すること。

8【その他参考になる事項】
自己株式又は自己新株予約権の売出しにより第三者割当を行う場合には、当該売出しによる手取金の使途について記載すること。
(企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令)

なお、パブリックコメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方に次の記載があるので、ご留意下さい。

「監査役による意見表明や第三者の意見の取得を強制する趣旨ではないと理解してよいか。監査役が表明する意見の対象は「当該 発行に係る適法性」であり、「その理由、判断 の過程」は含まれないと考えてよいか。 」というコメントに対し、

「会社が有利発行ではないと判断した第三 者割当に関して、監査役が意見を対外的に表明している場合又は第三者算定機関が評価を行 った場合には、その意見又は評価の内容を記載するという趣旨です。 また、監査役が、会社の判断理由や判断過程 についても対外的に意見を表明している場合には、その内容も記載することになると考えら れます。 」

と金融庁は答えています。

【リンク】

「企業内容の開示に関する内閣府令(昭和48年大蔵省令第5号)(第7条関係)」[PDF]
「「企業内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令(案)」等に 対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方」[PDF]