TDKの移転価格申告漏れ、追徴141億円取り消し

TDKが海外子会社との取引を巡る「移転価格税制」に基づき、2005年6月に東京国税局から約213億円の申告漏れを指摘され、東京国税不服審判所に取り消しを求める審査請求を出していた問題で、不服審判所が約141億円の処分を取り消したことが2日、分かった。地方税や還付加算金を含め約94億円が還付される見込み。TDKが同日発表した
(日本経済新聞2010年2月3日1面)

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本件の経緯は次の通りです。

  1. 2005年6月29日、東京国税局(日本橋税務署)より、1999年3月期から2003年3月期までの5事業年度について、TDK社とTDK社海外子会社との間の取引の価格が独立企業間価格と異なるという当局の判断により、移転価格税制に基づく更正処分の通知を受領。更正の結果による所得増差額は約213億円
  2. 2005年8月26日付、東京国税局に対し異議申立書の提出
  3. 2007年6月29日、京国税局より原処分の一部、30億73百万円を取り消す異議決定書を受領
  4. 2007年6月29日に原処分の取り消しが認められなかった部分の全額の取り消しを求める審査請求書を東京国税不服審判所に対し提出
  5. 2010年2月1日、東京国税不服審判所の裁決書を受領。原処分の一部となる約141億円が取り消され、法人税・地方税及び還付加算金等で約94億円が2010年3月期中に還付される予定

課税庁が納税者に対して行った「更正」や「決定」の処分に対して、納税者が納得できないとき、次のような手段が納税者に認められています。

  1. 税務署長や国税局長に対する異議申立([手続名]税務署長等の処分に不服があるときの異議申立手続
  2. 国税不服審判所に対する審査請求(「不服申立手続等」国税不服審判所
  3. 審査請求に対する国税不服審判所長の裁決があった後の処分に、なお不服があるときは、裁判所に対して訴えを提起(「不服申立手続等」国税不服審判所

このうち、国税不服審判所のあり方に少なからず問題があるとの指摘は従来より各方面からなされているところです。民主党は2009年マニフェストで国税不服審判所の見直しを掲げています。

「国税不服審判のあり方の見直し
納税者の権利を重視し、国税不服審判所のあり方や手続きを見直します。
税が議会制民主主義の根幹であることを考えれば、個別の課税事案に対して納得できない納税者の主張を聞く国税不服審判所は極めて重要な機関です。しかし現状は、この重要な役割を果たすには十分ではありません。特に、その機能を果たすために最も重要な審判官の多くを財務省・国税庁の出身者が占めていることは問題です。
そのほかにも証拠書類の閲覧・謄写が認められていないなどの問題があることから、国税審判のあり方やその手続きについて、納税者の権利を十分に確保することを基本に見直します。」(
民主党制政策集「税制」

今般のTDKのニュースは、国税不服審判所も変わりはじめていることの証左であるのかも知れません。
それにしても裁決までの時間をもう少し短縮できないものでしょうか。

【リンク】

2009年2月1日「移転価格課税に関する国税不服審判所長の裁決書の受領について」TDK株式会社