寄付金税制のあり方

・寄付の水準、米英に比べけた違いに小さく
・現行の所得控除では寄付促進効果不十分
・対象を拡大、年末調整での控除も検討を

(日本経済新聞2010年2月5日25面経済教室山内直人大阪大学教授)

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「古い公共」の担い手は政府・行政であり、主に税収によって公共サービスを提供するため、多様な公共ニーズに機動的に対応するのが難しい。一方「新しい公共」の担い手は非営利組織(NPO)や非政府組織(NGO)などの市民活動団体であり、その活動を支える資源として、寄付やボランティアが重要な役割を演じる。ただ現状では寄付もボランティアも市民活動団体の運営を支えるのに十分とはいえない。国際的にみても、例えば個人所得に対する寄付の割合は、米国や英国と比べけた違いに小さい」(前掲稿)

山内氏は現行制度の改善案として、

1.税制上、所得控除対象となる寄付先の増大
2.所得控除から税額控除への制度変更

を掲げています。

戦後日本は、格差のない社会資本主義的とも言える国家であったのが、政官財一体の計画経済運営が崩壊し、往きつ戻りつしながらも、大勢では市場型資本主義へシフトしています。市場型資本主義においては個々人の「倫理感」が極めて重要です。これがないと“勝つために手段を選ばない“、”勝った人間だけが偉い“といういびつな社会になってしまいます。

信教心を薄い人が大多数の日本では、特にこの傾向が強くなると思います。市場型資本主義が大きな格差を生むのは必然です。「倫理感」は、大きな富を獲得する人にその富を社会に還元することを求めます。そしてそういう人が賞賛され、尊敬される社会でなければなりません。

山内教授はNPOやNGO自身の努力が重要であると論じていますが、それ以前に政治のリーダーシップが求められると思います。

税金を払うことでその資源配分を国家に委ねても良いし、個人が寄付という形で使途まで指図しても良い。いずれを選択するかは個人に任せる、いやむしろ後者がより望ましいというメッセージを政治の側から発する必要があります。

そしてもうひとつ重要なことがあります。それは法人税における寄附金課税をやめることです。有力な寄付者となり得る中小企業のオーナーには、寄附金というと何か悪いことというイメージが刷り込まれている人が多いように感じます。

「寄附金認定」を伝家の宝刀のように使う、今の税務執行のあり方を根本から改める必要があるでしょう。

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