M&A会計最前線 新基準を読む

時価重視、買収価格正確に 追加出資で損出発生も

M&Aに関する会計基準が変わる。日本の会計基準を国際会計基準へ近付けるコンバージェンスの一環で、
買収価格を算定する際に時価をより重視したのが特徴だ。強制適用は2010年4月からだが、2009年4月
からの早期適用も可能。新基準の企業財務への影響を探る。

(日本経済新聞2009年3月13日14面)

山崎製パンは2008年11月、不二家への出資比率を35%から51%へ引き上げて連結子会社化した。
グループ経営強化を狙って関連会社を連結子会社にするのは珍しいことではない。だが新M&A基準を適用したと仮定すると、山パンの連結決算で45億円の特別損失が発生することになる。
なぜか。新基準は連結する際に、先行取得した株式を時価で再評価するからだ。山パンは2007年4月に1株235円で約6800万株を取得、計165億円を投じた。この投資簿価は出資後に不二家が損失を計上したため、130億円に目減りした。
一方、追加出資は1株124円。この価格を時価とみなす。先行取得の約6800万株を時価評価した価値は84億円強になるので、投資簿価130億円との差額である45億円が損失になる計算だ。

(前掲紙)

【CFOならこう読む】

取得が複数の取引により達成された場合(段階取得)における被取得企業の取得原価は、従来、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額によるものとされていました。

しかし、本会計基準等では、被取得企業の取得原価は、個別財務諸表では従来どおり支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって算定しますが、連結財務諸表では支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって算定することとしました。

この結果、連結財務諸表における被取得企業の取得原価と、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、連結財務諸表上、当期の段階取得に係る損益として処理することになります(企業結合会計基準第25 項、連結会計基準第23 項(1)、事業分離等会計基準第18 項及び第24 項、適用指針第46 項、第46-2 項、第85 項(1)、第99 項、第104 項、第110 項、第116 項(1)、第118-4 項、第119 項(1)、第123-3 項、第124 項(2)①、第281-2 項及び第293-2 項)。

企業会計基準第25項
取得が複数の取引により達成された場合(段階取得)の会計処理
25.  取得が複数の取引により達成された場合(以下「段階取得」という。)における被取得企業の取得原価の算定は、次のように行う。

(1)  個別財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって、被取得企業の取得原価とする。

(2)  連結財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって、被取得企業の取得原価を算定する。なお、当該被取得企業の取得原価と、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額(持分法適用関連会社と企業結合した場合には、持分法による評価額)との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。

連結会計基準第23項(1)
投資と資本の相殺消去
23.  親会社の子会社に対する投資とこれに対応する子会社の資本は、相殺消去する 。
(1) 親会社の子会社に対する投資の金額は、支配獲得日の時価による。

この規定はいったい何を意味しているかというと、のれんを支配獲得日の時価で評価する、別の言い方をすると、時価までのれんを一括償却(又は増額)させることを意味しているのです。

コンバージェンス完了後、のれんは規則償却しないことになるので、それはそれで良いのかもしれませんが、当面のれんの償却が必要な中、この変更はM&Aのプランニング上重視せざるを得ないですね。

【リンク】

平成20年12月26日
企業会計基準委員会
企業会計基準第21号
「企業結合に関する会計基準」、
企業会計基準第22号
「連結財務諸表に関する会計基準」、
企業会計基準第23号
「『研究開発費等に係る会計基準』の一部改正」、
改正企業会計基準第7号
「事業分離等に関する会計基準」、
改正企業会計基準第16号
「持分法に関する会計基準」及び
改正企業会計基準適用指針第10号
「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の公表