2009年度税制改正大綱―REITの導管性要件変更

税改正で再編機運高まる 金融危機下、信用力向上目指す

「高く評価したい」。不動産証券化協会の岩沙弘道理事長(三井不動産社長)は2009年度の政府税制大綱に満足げだ。不動産投資信託(REIT)の合併を阻んできた税制上の障壁が取り払われるからだ。
金融危機下、経営の厳しいREITが市場から退場するには2つの選択肢がある。一つは民事再生の適用や自主的な解散による上場廃止。もう一つは別のREITに吸収合併してもらうことだ。民事再生法は昨年10月にニューシティ・レジデンス投資法人が適用を申請したが、合併はまだ例がない。
なぜか。経営難で吸収される側のREITは、一口当たり純資産を下回る評価で投資口の交換比率が決まると予想され、その差額は「負ののれん」の名目で、吸収する側の利益として計上される。だがこれはあくまで帳簿上の利益で、利益分の現金が入ってくるわけでない。
一方、REITは利益の9割超を投資家に分配すれば法人税が免除される。課税を回避するには負ののれん代で利益が増えた分、分配金も増やさなければならないが、手元にある現金の範囲内で分配すれば利益の9割に届かず、法人税を課税される恐れがある。
2009年度の税制改正では、負ののれん代を利益から控除できるようになり、合併時の課税リスクが解消される。合併への道が開けたことで、生き残りを目指した再編ムードが高まりつつある。

(日本経済新聞2009年1月16日12面 試練のREIT 下)

【CFOならこう読む】

平成20年12月19日に財務省から公表された、「平成21年税制改正の大綱」では、特定目的会社等の課税の特例について、次のとおり見直しを行う旨記載があります。

「支払配当の額が配当可能所得の金額の100分の90相当額を超えていることとする要件を、支払配当の額が配当可能利益の額の100分の90相当額を超えていることとする。
なお、負ののれんがある場合に、その発生事業年度において配当可能利益の額から控除する等所要の調整措置を講ずる。」

変更点は2つです。

1つは、従来、導管性要件の90%の判定を、税務上の配当可能所得に対する支払配当金の割合で行っていたのを、会計上の配当可能利益に対する支払配当金の割合で判断することになったというもの。
もう1つは、負ののれん(の償却額?)を導管性要件の判定の際、分母の利益から控除するというものです。

1つ目の改正により、会計上減損損失が計上することの障害がなくなります。また2つ目の改正により投資口価値が純資産価値(NAV)を大きく下回るREITの吸収合併の道が開かれることになります。

2009年は、

「REITの再編元年となる可能性が高い」(前掲紙)

と私も思います

【リンク】

平成20年12月19日「平成21年度税制改正の大綱」財務省