M&Aに関する基準案公表

会計基準委 M&Aに関する基準案公表 年内に最終決定

企業会計基準委員会は30日、M&Aに関する一連の会計基準案と、投資不動産の時価開示に関する会計基準案を公表した。M&Aに関する新ルールでは、合併時に両社の資産や負債を簿価のまま合算する「持分プーリング法」の廃止などを決めた。8月20日まで一般から意見を募り、年内に最終決定する方針だ。M&Aに関する新ルールは、2010年4月以降に実施する案件から適用する。2009年4月以降に早期適用することも可能。
(日本経済新聞2008年7月1日 18面)

【CFOならこう読む】

新基準案の主な項目は次の通りです。

・企業合併時の持分プーリング法の廃止
・「負ののれん」は一括で利益計上
・買収で取得した研究開発は資産計上も
・株式交換時の株価算定時期はM&Aの実施日に

(上記新聞記事より)

のれん及び負ののれんについては、次のように規定されています。

のれんの会計処理
32. のれんは、資産に計上し、20 年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する。ただし、のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる。

負ののれんの会計処理
33. 負ののれんが生じると見込まれる場合には、次の処理を行う。ただし、負ののれんの金額に重要性が乏しい場合には、次の処理を行わずに、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理することができる。
(1) 取得企業は、すべての識別可能資産及び負債(第30 項の負債を含む。)が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行われているかどうかを見直す。
(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じる場合には、当該負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する。

正ののれんの規則償却をやめるルールについては今回の新ルールには盛り込まれていません。コンバージェンスの期限である2011年6月ぎりぎりの改正になるのかもしれません。少数株主持分からものれんを認識するか否かについての判断も先送りされています。

負ののれんについては、ほぼ米国会計基準SFAS141Rと整合する改正になっています。しかし、6月25日(https://cfonews.exblog.jp/8191889/)にお話しした通り、私はこの会計基準に問題があると思っています。

PBR(株価/1株当り純資産)が1倍を下回る会社がごろごろころがっている今の日本でこの会計基準を適用すれば、負ののれん目当てのM&Aが山のように実行されるようになるのは間違いないと私は思います。

【リンク】

「企業結合に関する会計基準(案)」
http://www.asb.or.jp/html/documents/exposure_draft/ketsugou/ketsugou_1.pdf