キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その5

協和発酵の株主配分に手詰まり感が漂い始めている。2009年3月期の年間配当は前期の2倍となる20円を予定するが、2010年3月期は減益が予想される配当据え置きが濃厚。足元の株価がキリンホールディングス傘下に入る際のTOB価格を大幅に下回っており、キリンHD株主への配慮などにより自社株買いも封じられている。
(日経ヴェリタス 2008年6月22日 19面)

【CFOならこう読む】

昨年、当ブログで協和発酵株式の希薄化問題を4回にわたりとりあげました。

キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?
https://cfonews.exblog.jp/6665341/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その2
https://cfonews.exblog.jp/6671262/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その3
https://cfonews.exblog.jp/6676645/
キリンの協和発酵買収:1株当たり利益(EPS)の希薄化は問題か?-その4
https://cfonews.exblog.jp/6681686/

今日はこの続編です。

記事に次の記述があります。

「配当政策を明確に掲げていなかった同社は今期「連結配当性向30%(のれん償却前利益ベース)」を掲げた。5年ぶりの増配となる今期の20円配はそれに沿ったもの。
配当性向を厳密に守れば来期は減配だ。松田譲社長は「減配は考えていないが、増配も厳しい」と話す。
となると「機動的な自社株買いと自社株消却で株主配分を強化したい」(松田社長)ところ。キリンHDへの新株発行で協和発酵の発行済み株式数が44%増えており、自社株買いで消却するのが自然な流れだからだ。
しかし、両社は今後10年間キリンHDの協和発酵への出資比率を50.1%とする契約を結んでいる。協和発酵が自社株買い、消却をすれば発行済み株式数が減る。キリンHDの出資比率50.1%を維持するために「キリンHDに協和発酵株を売却してもらうようお願いすることになる(協和発酵幹部)というのだ。
キリンHDが買い付けた協和発酵株を売却しようとすると今度は別の問題が発生する。協和発酵株の株価はTOB価格を下回る水準で推移。キリンHDの株主から「1500円で買ったのになぜそれより安い価格で売るのか」と反発が出ることが予想されるのだ。協和発酵はキリンHD株主に「配慮」せざるを得ず、株価が1500円以上にならないと自社株買いできないジレンマに直面する。思うように株主配分できず低迷する株価にカンフル剤を打てない悪循環。経営陣はもどかしさ募らせている。」

そのジレンマは、協和発酵株式の大幅な希薄化を伴うディールに起因しており、自業自得と言えます。資本政策の失敗を後から修正するのは極めて困難なのです。

”覆水盆に返らず”です。

【リンク】

なし