買収防衛型ファイナンス?-住友金属鉱山のケース

割高な調達コスト 株主への説明難しく

「調達コストが高すぎないか」。住友金属鉱山が2月に調達した「新株予約権付ローン」に対して、市場関係者の間でこんな感想が聞かれた。
このローンでは、住友金属鉱山が三井住友銀行から1000億円を借り入れるとともに、同行に新株予約権2万個を割り当てた。金利は実質年1.45%で基準金利のスワップ金利に対する上乗せ幅は0.36%前後だった。
ある国内証券の担当者は「1000億円の巨額調達とはいえ、普通社債なら上乗せ幅は0.2%前後で済み、年利は1.29%程度になったはず」と解説する。
住友金属鉱山株式を取得できる新株予約権の価値を含めれば、実は普通社債より金利が安くなってもおかしくない。にもかかわらず、金利が高いのはなぜか。「自社の判断で自由に資本調達をコントロールできるようにしたかった」(田尻直樹常務執行役員)という住友金属鉱山側の要望が一因だ。

(2008年4月17日 日本経済新聞 14面 検証買収防衛型ファイナンス)

【CFOならこう読む】

私はこの日経の記事がよくわかりません。
2月1日に住友金属鉱山の新株予約権付ローンをこのブログでとりあげました。
https://cfonews.exblog.jp/7170502/

この日の日経はこのスキームについて「通常の借入金に比べ低利のため今回のスキームを採用することにした。」と報じていました。
それが今日の日経の記事は、「金利が高い」と評価しているのです。しかもその理由を「万が一のための用心棒代」と説明しているのです。

私には社債マーケットについての勘が備わっていないので、金利の高い安いを論じる能力はないのですが、あえて言わせてもらえば、そもそもCBを始めオプションが付与されているデットで資金調達をする理由は、一括法により会計処理をすることができるため表面金利を引き下げることができるからのはずで、”金利が高い”株式転換型のデットによりあえて資金調達をしようと考える企業があるとは思えないのです。

今日の日経17面は住友金属工業の7年債百億円の募集について報じています。利率は1.35%、国債利回りに対するスプレッドは0.4%。住友金属工業の格付けはダブルAマイナス、住友金属鉱山の格付けはシングルAプラス(JCR)であることを考えると1.45%という金利が特に高いという風には思わないのですが…

【関連過去記事】

2008年02月16日「社債、金利上乗せ幅拡大 企業の資金調達に影響も 」
https://cfonews.exblog.jp/7274985/

【リンク】

平成20年1月31日「新株予約権付ローンに係る第三者割当による新株予約権の発行に関するお知らせ(行使価額修正条項付)」住友金属鉱山株式会社
http://www.smm.co.jp/release/2008/pdf/20080131-2.pdf

2008年04月16日「UPDATE2: 住友金属工業<5405.T>、期間7年国内SB発行条件を決定=利率1.35% 」ロイター
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK011854820080416?rpc=144