中外製薬、為替予約の会計処理変更

中外製薬が24日発表した2012年1~3月期連結決算は、経常利益が163億円と前年同期比2%減った。主力の医薬品販売は伸びたが、為替予約に関する会計処理を変更したことで、前年同期と比べ営業外収益が減少した。
(日本経済新聞2012年4月25日12面)

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「親会社のスイス・ロシュからの仕入に対する為替予約の会計処理を変更。これに伴い営業外収益に計上するデリバティブ評価益が減り、経常減益となった」(前掲紙)

中外製薬は、第1四半期決算短信において、次の開示を行っています。

「(外貨建予定取引に係る為替予約取引の処理方法)
外貨建予定取引に係る為替予約取引の処理方法は、従来、時価評価を行い評価差額を損益処理していましたが、近年の為替レートの著しい変動や当社における外貨建取引の増加傾向を踏まえ、為替予約に関する社内のリ スク管理規程を再整備し、ヘッジの効果を財務諸表に反映させ、より適切な期間損益計算を行うため、当第1四 半期連結会計期間より、為替予約取引の一部についてヘッジ会計を適用し、繰延ヘッジ処理に変更しました。
当該会計方針の変更は、当第1四半期連結会計期間より為替予約に関する社内のリスク管理規定を再整備した ことに伴うものであり、前第1四半期連結累計期間には影響はありません。
なお、当該会計方針を適用しなかった場合と比較して、当第1四半期連結累計期間の経常利益及び税金等調整 前四半期純利益はそれぞれ484百万円減少しております。」

ヘッジ取引にヘッジ会計が適用されるのは、次の要件がすべて充たされた場合とされます。

(1) ヘッジ取引時において、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、次のいずれかによって客観的に認められること
1 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること
2 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該
取引がこれに従って処理されることが期待されること

(2) ヘッジ取引時以降において、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き 続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること
(企業会計基準第10号 金融商品に関する会計基準 31項)

中外製薬は、リスク管理規定を再整備したことで、ヘッジ会計適用の要件を満たした、というのが今日のニュースです。

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