アデランス委任状争奪戦、スティール勝利
アデランスホールディングスは28日午前、東京都内で定時株主総会を開き、会社が資本業務提携を予定していた国内投資ファンド、ユニゾン・キャピタルからの役員受け入れを反対多数で否決した。一方、対立する筆頭株主の米スティール・パートナーズが推す役員候補は全員承認された。これを受けてユニゾン主導の経営再建計画は白紙となる見通しだ。
(NIKKEI NET2009年5月29日)
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「米投資ファンドのスティール・パートナーズはアデランスの株主総会で自ら提案した取締役が選任されたことで、アデランスの経営改革を急ぐ考えだ。スティールにとって投資先企業の経営に深く関与する初の事例でその成否は未知数。今後は他の株主や社員などに対しても一定の責任を負うことになる。」(前掲紙)
スティールの現時点における持株比率は26.7%です。
当面この持株比率を維持したまま、経営改革に取り組むのか、安定多数を確保した上で経営に当たるのかが注目されます。
新経営陣の事業目標は次の通りです。
- 収益性の回復とアデランスの中核事業である男性用毛髪事業の運営改革
- アデランスの経営資源を重要な女性向け事業セグメントへ向けるため、女性関連事業を統合
- 効率性と収益性を最大化するため、現在複数ある北米子会社を完全統合
- ターゲット顧客分析、各広告宣伝や販路チャネルの費用対効果の検証を含めた、マーケティングと広告宣伝実務の刷新・改善
- アデランスの長期的安定と業績改善に資する、健全で効率的なバランスを創るための、コスト構造と運転資金需要の見直し
- 非事業性資産の処分を加速
- アデランスの資本の使途を改善するため、資源配分とキャッシュマネージメントシステムを再構築
- 固定費の見直しと改善
- 株主を持分希釈化から守るため、アデランスの自己株式保有を見直し、その消却を検討
ユニゾンの価格を大幅に上回る価格でTOBを行い、50%超の持株比率を確保した上で、本腰を入れて経営改革に当たるべきであると私は思います。
いずれにしても、濫用的買収者だ、グリーンメーラーだ、はげたかファンドといった、謂れのない誹りを受け続けて来たスティールにとって、自分たちが何物であるか、さらに「経営者を教育しにきた」というリヒテンシュタインの発言に嘘がないことを、世の中に知らしめる千載一遇のチャンスです。
ぜひともキチンとした成果を出してもらいたいものです。
スティールは昨日発表したプレスリリースで、”日本のコーポレートガバナンスに新たな進展”と自画自賛していますが、成果が出せなければ、日本のコーポレートガバナンスは大きく後退する可能性があることを肝に銘じて、事に当たってもらいたいと切にお願いする次第です。