フェイスブックの成功が米国の夢と重ならないのは何故か

米国のフェイスブック騒動はまだ続いている。ナスダックは先週、株式公開(IPO)時の取引混乱の責任をとって、損失を補填すると発表した。
前週末のフェイスブックの株価は27.10%で、公募・売り出し価格の29%安。過去10年で最悪のIPOとさえいわれ、余波でIPOを見送る企業も出てきた。
(日経ヴェリタス2012年6月10日44面 米州総局編集委員藤田和明)

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記事は、フォード自動車創業者のヘンリー・フォードが、「米国に血と肉を与え呼吸させた」のに対し、フェイスブックは、米国の夢を体現していないと述べています。

「フェイスブックがつまづくやいなや、ねたみや批判が噴き出す。フェイスブックの成功の先に、米国の夢が不思議なほどに重ならないのは、マネー主導で期待を膨らませすぎた反動か、それとも格差問題の根深さの裏返しか、重い問いかけだ」(前掲紙)

フォードの時代は、新たな企業家の成功が数十万人という規模の新たな雇用を創出しました。だから企業家の成功を自分のことのように喜ぶことが出来たのです。

現代の起業は、テクノロジーの進化によるイノベーションに基づきます。テクノロジーは、必ずしも雇用に結ぶつきません。むしろ、テクノロジーの進化により、人件費を削減でき投資効率が上昇することを良しとするのです。

企業家は時に大成功を収めることができます。これにうまく投資した投資家も大成功を収められるかも知れません。しかしその他の人は単なる傍観者か、せいぜいサービスの利用者でしかありません。

つまり一人の大成功が皆の成功につながらない時代なのです。大きな格差が生まれるのは必然です。

これが、フェイスブックの成功が、米国の夢と重ならない理由です。

しかし格差を嘆いていても始まりません。時代が変わったことをはっきり認めた上で、自らの生き方を見つめ直すことこそ肝要です。

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