川崎重工、三井造船との交渉白紙にー続き

川崎重工業が「35分の解任劇」で三井造船との経営統合を白紙撤回した。台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープへの出資、日本ペイントに対するシンガポール塗料大手ウットラムグループへのTOB(株式公開買い付け)など、トップ同士がいったん合意したM&Aや資本提携の「破談」が続いている。背景にはガバナンス(企業統治)を巡る構造問題がある。
(日本経済新聞2013年6月16日7ページ )

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14日のエントリー「川崎重工、三井造船との交渉白紙に」の続きです。

「この日の会見で株主価値に関する言及はほとんどなかった。株主利益を守るのが取締役の第一の責務であることを考えれば、三井造船との経営統合が川重の株主利益をどう損なうのか、論理的な説明があってしかるべきだ。
 株主は経営統合を推し進めた長谷川氏の言い分も聞きたかったはず。株主利益をそっちのけにして「許せなかった」で済ませたのでは「内輪もめ」の印象をぬぐえない。」(前掲紙)

私が感じたのと同じことを言っています。
こういう声が大きくなることで、日本企業のガバナンスは強くなっていくのだと思います。

「川重、シャープ、日本ペイントのケースに共通するのは「トップの決断」の軽さだ。欧米でも「株主の利益を著しく損ねる」と判断したとき、社外取締役などが中心になって最高経営責任者(CEO)を解任することはある。だが全権を任されたCEOの決断が、論理的な説明もなく覆ることはない。」(前掲紙)

M&Aは、多くの場合、買収会社側、被買収会社側いずれの経営陣にとっても、自己のポストが失われることを意味します。従って、国富や株主価値の観点から望ましいM&Aも、経営陣にとっては必ずしも望ましいものではなく、自己保身の観点からこれを止めさせたいというインセンティブが常に働きます。

取締役会が経営者・従業員の利益を最重視するなら、トップが株主価値の観点から良いと考えたM&Aも進めることはできません。

これは全ての日本企業が抱える構造的な問題です。

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