社外取締役は高級自動車と同じ?

社外取締役のいる企業の割合が東証1部で6割を超えた。企業統治の観点から上場企業に選任を義務づけるべきか、今まで通り各企業の判断に委ねるべきか。経団連でこの問題を担当する経済法規委員会・企画部会の佐久間総一郎部会長(新日鉄住金常務)と、カネボウや日本航空の再建に携わった冨山和彦・経営共創基盤・最高経営責任者(CEO)に聞いた。
(日本経済新聞2013年9月22日9ページ)

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冨山氏は日本企業に社外取締役が必要な理由を次のように述べています。

「日本では社長の権限はそれほど強くなく、暴走するほどパワーのある人も少ない。取締役会では社長以下のサラリーマン役員が互いの顔色を見て、空気を読みながら物事を決める。あつれきを避けようとするから、不採算事業からの撤退といった重要な意思決定を先送りする。こうした『不作為の暴走』を許す『ムラ型ガバナンス』が日本の大企業が抱える最大のリスクで、ムラの空気をかき乱すのが社外取締役の使命だ。」(前掲紙)

日本企業のガバナンスが、「ムラ型ガバナンス」であるという冨山氏の意見には全面的に賛成です。

一方、その「ムラ型ガバナンス」の頂点に存在する経団連の佐久間氏は、日本には監査役制度があるのだから社外取締役の選任を義務付けるのは不要と断じています。
そして、こんなことを言っています。

「―独立性の高い社外取締役がいる企業は、いない企業より自己資本利益率が高いという論文もあります。
 「高級車を持っている人(社外取締役のいる企業)は、年収が高い(資本効率が高い)傾向がある、と指摘しているようなものではないか。年収を増やすには高級車を買うべき、とは言えないだろう。燃費のいいクルマを買ったり、公共交通機関を利用したりしても年収は上がるかもしれない。会社の業績を向上させる手段も色々ある」」(前掲紙)

社外取締役を高級自動車になぞらえるとは。
今年を代表する名言(迷言)となる予感。

無駄な高級車を買おうとしているときに、何故その車が必要なのかを問うのが社外取締役の役割です。
そしてそこで必要な視点は、株主からの視点です。しかもそれは一部の金持ちの視点ではなく、老後の資金を
運用する一般市民の視点です。

他者の信任を受けて市民の資金を運用する。それが企業の、そして経営者の仕事です。
カネを高級車に遣うという比喩を出すこと自体、そういった経営者の職責を理解していない証拠のように私には思えます。
「岩盤」規制の緩和を政府に迫るのが経団連の重要な役割の一つですが、その経団連が最も厄介な「岩盤」となっていることに彼らは気付いているのでしょうか?

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