JDC信託問題

6月に財産返還を含む厳しい行政処分を受けたジャパン・デジタル・コンテンツ(JDC)信託の不祥事が波紋を呼んでいる。顧客の信託財産を流用していたことが発覚し、顧客へのしわ寄せも表面化している。信託免許を与えた金融庁は誤算に頭を抱えている。
(日本経済新聞2009年7月10日4面)

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「流用したのは映画制作への投資目的で顧客から預かった資産。信託勘定から1億8000万円が流用されていた。契約書の同意を得ずに信託報酬の前払いとして1億2000万円を引き出していたことも判明。金融庁は「管理体制がなっていない」と激怒した。
JDCは通産省(現経産省)の研究会を母体とし、トヨタ自動車や日本ビクターなどから出資を受けて発足した。日本のコンテンツ産業の発展へ必要なリスクマネーを供給する役割を担うと期待されていた。銀行以外の会社に信託業務への参入を解禁した規制緩和の1号案件でもある。
金融庁は今回の教訓をどういかすのか。現在、信託会社は14社。信託会社の監督・検査を強化するとともに、顧客財産を保護するための基金の設立や信託協会による自主規制の強化といった課題は避けては通れない、」(前掲紙)

そもそも”官僚たちの夏”の時代を引きずって、官が殖産興業を担うという発想が時代錯誤も甚だしい。

クール・ジャパンの本質を理解せず、日本アニメやゲームであれば何でも良いという人間が経営を行っても、成果を生むことが出来るはずがありません。

この事件を契機に、信託を利用したフィルム・ファイナンスの道が塞がれることがないよう、金融庁には節にお願いする次第です。

制作者に正当な報酬を支払うには、製作委員会方式では難しい面があり、信託の利用価値は大きいと考えられます。

この事件をきっかけに、投資家保護を徹底しつつ、よりこの分野において信託が使い勝っての良い箱とする必要があると僕は思っています。

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