日本航空の年金が法的整理で削減される可能性

日本航空が公的機関である企業再生支援機構のもとで近く再建に向け動き出す。
旧政権時代のしがらみを絶つため、前原誠司国土交通相が肝いりで直轄の対策
チームを立ち上げたものの空中分解、機構入りの見込みとなった。

「チーム前原」が迷走した最大の原因は国交相が9月下旬、会社更生法の利用など
法的整理を「現時点では一切考えていない」と表明したことだろう。

 (日本経済新聞2009年11月10日15面 一目均衡)

【CFOならこう読む】

法的整理を行わなえない理由のひとつとして、年金は労働債務だから優先債権に分類され、一般債権に優先して弁済されることになるので、減額することができないためと説明されていたが、これは誤解であると今日の記事には書かれています。

「更生法の手続きに入ると年金基金に対する日航グループの債務の大部分が更正計画のなかで処理されることになるが、そのすべてが必ず優先的に弁済されるわけでもないようだ。」(前掲紙)

会社更生法168条第3項は、「異なる種類の権利を有する者の間においては、権利の順位を考慮して、更正計画の内容に公正かつ衡平な差を設けなければならない」とされており、その順位は、

1 更正担保権
2 一般の先取特権その他一般の優先権がある更正債権
3 1及び2以外の更正債権
4 残余財産の分配に関する優先株式
5 4以外の株式

となっています。

「「公正かつ衡平な差」とは、具体的な基準が存するわけではないが、実務上は、優先的更正債権の一部が放棄されるような場合に、それに後れる債権がすべて放棄されなければならない趣旨とは解されていない」
(「企業再生実務ハンドブック」 知野雅彦著 日本経済新聞社)

法的整理の元ベテラン裁判官もケースバイケースと話す。
さらにいえば仮に優先債権に分類されても更正法上、減額は可能だ」(前掲紙)

「大手法律事務所のTMI総合法律事務所が先月末、民主党議員の要請を受けまとめた意見書には「著しく高額であれば労働の対価としての性格が薄れ、優先債権に当たらない可能性がある」と記す。(前掲紙) 

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