多国籍企業の節税監視

米アップルやグーグル、アマゾン・ドット・コムなど、グローバル企業の「節税」に監視が強まっている。低税率の国に巨額の資産を移して税負担を軽減する仕組みで、企業にとっては最大の利益を確保するための合法的な措置。だが財政悪化に直面する各国政府は「課税逃れ」と指摘する。企業のグローバル化やIT(情報技術)化に、各国の税制が追いつかない面もある。
(日本経済新聞2013年5月21日15ページ)

【CFOならこう読む】

「多国籍企業は世界で稼いだ利益を低税率の国にどうやって移しているのか。手法の一つが、低税率国の子会社を通じて製品を世界に供給し、利益や特許料収入をその子会社に集める仕組みだ。
 例えば、アイルランドのような低税率国にグループの販売統括会社や特許管理会社を設立。各国子会社は販売を仲介するだけにし、低税率国の子会社が販売する仕組みにする。こうすれば、売り上げに伴う利益のほとんどが低税率国に集まる。」(前掲紙)

低課税国に高収益機能を置き、高課税国に低収益機能を置くことでグローバルなタックスプランニングを行っているわけです。

米国議会はかなり前から米系多国籍企業の所得移転を問題視しており、例えば米国両議員税制委員会が2010年に報告書としてとりまとめています(Joint Committee on Taxation, Present Law and Background Related to Possible Income Shifting and Transfer Pricing, July 20, 2010, JCX-37-10)。

この報告書は事例研究になっており、リアルなタックスプランニングが詳細に記述されており、大変読み応えのあるものになっています。

この報告書を、租税研究2010.12で東大の増井良啓教授が日本語で紹介しています。
http://www.masui.j.u-tokyo.ac.jp/doc/Soken201012.pdf

多国籍企業はグローバルに事業展開をし、全世界合計の税引後利益を最大化するために日夜努力しているわけで、米国企業だからという理由で米国に税金を納めなければいけないという前提にそもそも無理があるのも事実です。

一方、日本企業もグローバル化の深化に伴い今後税金をコストとして捉えることが当たり前の時代になっていくかもしれません。
そうなると、日本の法人税率の高さに耐えかねて日本を脱出する企業が続出するでしょう。

米国の多国籍企業の姿は決して他人事ではありません。

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なし