ホンダ(下半期)、トヨタ(通期)営業赤字へ

ホンダ、工場稼働延期 減産、国内12社では220万台強に

世界的な自動車需要の縮小を受け、自動車各社が事業計画の見直しを急いでいる。ホンダは17日、国内の新工場・研究所の稼働延期を柱とする事業計画見直し策を発表。2008年度下半期(08年10月―09年3月)は営業赤字に転じる見通しで、戦略的な投資削減に踏み込むことで急場をしのぐ。日産自動車も減産幅を拡大。日本の自動車メーカー12社が世界で取り組んでいる減産規模は今年度、当初計画比で1割弱に当たる220万台強となる見込み。米国発の金融危機が顕在化して以降、業績悪化が急速に進んでいる。
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081218AT1D170BR17122008.html
http://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20081219AT2D1802818122008.html

【CFOならこう読む】

2008年11月6日にトヨタは業績の下方修正を発表しました。そこで発表されたのは、営業利益が対前年度で73.6%減少して6000億円になるという驚愕の内容でした。世に言う”トヨタショックです。そしてそれから1ヶ月と少ししか経っていないのに、さらに業績が悪化し、営業利益がマイナスとなる見通しと報道されました。2008年3月期には2兆2703億円であった営業利益が全て吹き飛んだのです。

これは大変なことです。日本における自動車産業の重要性を鑑みると、日本経済全体が危うい状況にあると言ってよいでしょう。しかし何故こんなことになっているのでしょう。今はまず現状を正しく理解することが大切だと私は思います。

野口悠紀雄氏は、最近出版した「世界経済危機 日本の罪と罰」(ダイヤモンド社)の中で、今起きていることは、「アメリカ発の金融危機が日本に飛び火している」のではなく、「問題はマクロ経済の歪みであり、日本はその中心に位置している。今後の景気後退は不可避」と指摘しています。

私は野口氏の見解は極めて本質を突いたものだと思っています。野口氏が言っていることを要約すると次の通りです。

「アメリカ人の過剰消費が90年代末からのアメリカの経常赤字の拡大を生んだ。大きな家に住み、自動車を数台所有するという生活が過剰消費を生んでいる。アメリカが経常赤字を持続するには、資本取引によりファイナンスする必要がある。そのためにはドルが減価しないことが大前提となる。ところがサブプライム以降ドルの信認がゆらぎ、この構造を維持することが不可能になっている。であるなら、もはやアメリカの経常赤字は維持できず、過剰消費も改めざるを得ない。
日本は脱工業化が必要であるにも関らず、本当に必要な構造改革を断行せず、低金利・円安政策により、古い産業構造を温存した。これが円安バブルを生み、見せかけの日本の景気回復に繋がったが、決して日本経済が強くなったわけではない。
円安バブルが、円で資金調達し高金利通貨で運用する「円キャリー取引」を増加させ、これがサブプライムローン関連金融商品に回った。2005年以降の企業収益の増加と株価の上昇はこの円安バブルによるものである。現在この「円キャリー取引」の巻き戻しが起きており、円高をもたらした。円ドルレートの調整はまだ終わったとは言えず、さらなる円高もあり得る。
アメリカの経常赤字縮小は、日本の経常黒字縮小を意味する。日本の貿易黒字縮小は不可避だ。GDPの5%のマイナス成長もあり得る。
中長期的に見てより大きな問題を抱えているのはアメリカよりむしろ日本だ。これからの日本は、制御不可能な事態に直面する可能性がある。必要なのは日本経済の構造大転換。」

  そして野口氏はベンチャー企業の起業の重要性を強調しています。

その通りだとは思いますが、今の日本ではグリー程度の会社がもてはやされるに過ぎません。淋しい限りです。

 

【リンク】

世界経済危機 日本の罪と罰
野口 悠紀雄

世界経済危機 日本の罪と罰

ダイヤモンド社 2008-12-12
売り上げランキング : 92