タックスヘイブン税制ーコンビ適用対象外へ

ベビーメーカー大手のコンビは「タックスヘイブン(租税回避地)対策税制」の適用除外になるように2010年3月期から海外の事業構造を見直す。タックスヘイブン対策税制は、税率が25%以下の国や地域に設立した子会社に所得を留保し、税負担を減らす租税回避行為を取り締まるための制度。税率が低い地域に子会社があっても、いくつかの要件に当てはまり、子会社の実体が認められれば、適用を除外される。
(日本経済新聞2009年9月3日15面)

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タックスヘイブン対策税制は、タックスヘイブンに所在する子会社に留保している所得を、その子会社が真に正常な経済活動を行っている場合を除き、日本の親会社の所得に合算して課税するものです。

■タックスヘイブン対策税制の対象となる外国法人等

我が国の居住者又は内国法人によってその発行済株式又は出資金の50%超を直接又は間接に保有されている外国法人(「外国関係会社」(租税特別措置法40の4、66の6))のうち、本店又は主たる事務所に課税される租税の額が著しく低い(課税がない又は税額が所得金額の25%以下)である場合、これを特定外国子会社といい(租税特別措置法施行令39の14)、タックスヘイブン対策税制対象となる。

■対象となる納税義務者

特定外国子会社の発行済株式又は出資金の5%以上を直接又は間接に保有する居住者又は内国法人(租税特別措置法66の6)

■合算対象となる留保所得

適用対象金額(基準所得金額-繰越欠損金-納付法人税額(-人件費の10%相当額))×持株割合等

■適用除外制度

次の4つの条件をすべて満たしている特定外国子会社等は、合算課税の対象から除外される
(租税特別措置法66の6)

(1) 事業基準
主たる事業が次のものでないこと
a. 株式、債券の保有
b. 工業所有権、著作権等の提供
c.船舶、航空機の貸付

(2) 実体基準
本店所在地国に主たる事業に必要な事務所、店舗、工場等の固定施設を有すること

(3)管理支配基準
本店所在地国において主たる事業の管理、支配及び運営(取締役会の開催等)を自ら
行っていること。

(4) 非関連者基準又は所在地国基準
特定外国子会社等の業種に応じて、次の基準に該当すること

a. 非関連者基準(対象業種:卸売、銀行、信託、証券、保険、水運、航空運送)
その主たる取引がの50%超が関連者(50%以上出資会社等)以外のものと行われていること
b. 所在地国基準(対象業種:非関連者基準に該当しない業種)
対象業種に該当するいずれかの事業を、主として本店所在地国で行っていること

なお、不動産業と物品賃貸業については独自の基準が設定されている

「コンビは2008年の税調査で香港子会社の利益についてタックスヘイブン対策税制を適用され、2009年3月期~2010年3月期の間に7億円弱税負担が増した。」(前掲紙)

この件について、コンビは次のようにプレスリリースを行っています。

「2009/08/03

東京国税局からの更正通知の受領について

コンビ株式会社はこのたび、東京国税局より、2005年3月期から2008年3月期までの「法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」、2008年3月期の「消費税及び地方消費税の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」を受領しました。
更正された所得金額は約24億円であり、追徴税額は地方税等を含め、約7億円と試算されます。更正通知の主たる内容は、タックスヘイブン対策税制適用に関するものですが、弊社といたしましては、東京国税局の通知内容を真摯に、かつ重く受け止めるとともに、更正された事項について十分精査した上で、然るべく対応する所存であります。」

「コンビの香港子会社は卸売業に分類されるが、卸売業の場合、適用を除外されるためには仕入か販売のどちらかで外部取引が5割を超える必要がある。香港子会社は中国の製造子会社からベビー用品を仕入れ、日本のコンビ本体に輸出しているため、内部取引の割合が高かった。」(前掲紙)

租税特別措置法施行令39の17は、上記の非関連者基準の適用について、その判定は、売上高又は仕入高のいずれか一方のうち非関連取引が50%超であることを要件としています。コンビはこの要件を満たしていないものと判断されたものと思われます。

「これを受け、7月以降中国の製造子会社から香港を経由せずに日本に輸入する割合を増やす。これにより、香港は材料など外部からの仕入の割合が増え、税制の適用から除外される見通しだ。」(前掲紙)

なお、本日のエントリーは以下の書籍を参考にしました。

「国際租税法」(藤本哲也著 中央経済社)

「スピードマスター国際税務」(矢内一好/高山政信著 中央経済社)

「国際租税法」(増井良啓/宮崎裕子著 東京大学出版界)

【リンク】

2009年8月3日「東京国税局からの更正通知の受領について」コンビ株式会社