米国基準採用会社の自己資本比率

米国会計基準を採用する日本企業の決算短信の記載方法を巡り、混乱が生じている。新しい米基準に対して東京証券取引所が明確な指針を示さなかったため、4~6月期決算では一部の表記が異なっている。投資家は米基準の決算短信を見る際には注意が必要だ。
(日本経済新聞2009年9月10日14面)

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「新しい米基準は「連結グループの株主はだれか」という考え方を変更。従来は親会社の株主だけだったが、新基準では少数株主も連結グループの株主と位置付けた。この変更に伴い、貸借対照表では少数株主の出資分も資本に算入する。損益計算書では純利益の定義が変わり、少数株主の取り分も含む形になる。」(前掲紙)

これにより東芝の自己資本比率が前期末8.2%から6月末には19.9%へと急上昇した、ということが今日取り上げた記事の中に書かれています。

米国基準におけるこの変更はIFRSとのコンバージェンスの一環で行われたものですが、IFRSを無批判に受け入れて良いのか、疑問に思います。

子会社の持分を60%保有する親会社の連結財務諸表上40%の非支配持分が資本として認識されるのが、投資家に有用な情報となり得るのか? 会計上非支配持分が負債の定義を満たさないからと負債ではないというのは、あくまで会計理論上の理屈の問題であって、投資家に有用であるとの確証に基づくものではありません。

少なくとも投資家側の株主価値評価の上では、非支配持分は有利子負債と同様企業価値から控除されることと符号していません。

「IFRSが米国GAAPよりも投資家に有用であるという確たる証拠は存在しない。IFRSが高品質であるというのは、今のところ基準統一推進派の宣伝に過ぎない。」(週刊経営財務 21.9.7 12頁 福井義高 「緊急レポート 2009年米国会計学会年次総会」)

日本ではIFRSの評価がなされていないに等しい中、簡単に日本基準を捨てて良いのか、最近とても疑問に感じています。

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