役員報酬の有価証券報告書での公表、義務化へ

金融庁は2010年3月期から上場企業などに役員報酬の公表を義務付ける方針を固めた。現在は任意になっている有価証券報告書での公表について、役員報酬総額のほか、支払形態や報酬額の決定方法を掲載するように求める。報酬の透明性を高め、経営陣が高額報酬を目的に短期的な利益追求に傾斜していないかを投資家が監視しやすくする。
(日本経済新聞2009年9月11日1面)

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取締役と監査役に支払う役員賞与を含む役員報酬総額のほか、現金やストックオプションといった報酬の支払形態についても公表を求める。報酬の決定方法も公表を義務付ける。例えば業績連動型報酬を導入している場合、売上高や最終損益などの増減が報酬にどの程度反映されるかなど明確な基準を示さなければならない。」(前掲紙)

現状定時株主総会の招集通知の中で、役員報酬総額もストックオプションの付与状況も開示されているし、多くの上場企業が役員報酬総額の開示は行っているので、ここまでは企業にとって抵抗はないでしょう。

しかし報酬の決定方法の義務化についてはどうか?

多くの会社では、個々の取締役の報酬決定は社長に一任しており、その意味では社長の報酬は社長が決定しています。あらかじめ明確な報酬決定のフォーミュラーを持っている会社は少数であるのに、明確な基準を示せと言われてもなかなか難しいと思います。

取締役会が取締役の業績を評価し、報酬に反映させるというガバナンスであれば、事前にその評価システムを開示させることに意味はあると思いますが、日本の多くの企業はそうではないわけで、あえてそこまで義務化させる必要はないように思います。

日本企業のガバナンスの弱点は、経営者が会社という村と村民である従業員の存続にしか関心がないところにあり、米国のようにトップが私腹を肥やすために企業を食い物にするということはあまりありません。

にも関わらず規制だけ米国のまねをしても意味がないし、義務化により、逆に業績連動型の報酬体系の導入を企業に促し、結果として高額報酬を余儀なくされることにつながることもあり得ると僕は思います。

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