日本的M&A

日本板硝子チェンバース氏に聞く

「小が大をのむ」と話題になった買収劇。買われた側の子会社から抜擢された英国人トップが目の当たりにしたのは、「日本流経営」と「国際標準」の間の埋め切れない溝だったー。就任から1年あまり、突然の辞任表明で株式市場を驚かせた日本板硝子のスチュアート・チェンバース前社長が、最後に語った。
(日経ヴェリタス2009年10月4日14面)

【CFOならこう読む】

「今回のような小が大を飲む買収では、海外(ピルキントン)の社員にすべて日本と同じにやってもらうわけにはいきません。世界中どこでも同じ品質、同じ価格で製品を提供するためにどんな仕事の進め方が最も適切かを吟味し、それをすべての地域に適用していく必要があるのです。」

「世界全体で仕事の進め方を統一するなら、人事評価も世界全体で統一しなければなりません。ところが、それまでの板硝子では何年働いてきたかで待遇が決まり、大きな努力をしなくても昇進できるという状況でした。でも、そんなやり方を他の国でやろうとしても絶対にうまくいきません。だから仕事の成果に応じた評価と給与体系に改める必要があったのです。」

「本来なら会社のブランドを最初から統一すべきでした。例えば『NSG-ピルキントン』とか。1つのロゴを作ってまとめた方が結束は間違いなく高まったことでしょう。実際には、グループ名を『NSGグループ』にしながら、ガラスの『ピルキントン』ブランドをそのまま使ったので、なんだか別々の組織という感じが残ってしまいました。」

スチュアート・チェンバースさんの話はM&Aを行った多くの日本企業に当てはまるように思います。

多くの日本企業のM&Aの動機は、市場が成熟し固定費の回収が困難になったので、統合してリストラを行うことにより損益分岐点を下げるとか、製品ラインナップを補完するためとか、仕入れ先や売り先に対する価格交渉力を強めるためといったところにあります。

そういった動機のもと行われるM&Aは、経営統合という言葉が象徴的しているように、必ずしも完全に融合しなくても取り敢えずの成果を出すことが可能です。また完全に融合しない方が自分達のムラをM&A前と変わらず存続させることが出来るので、ムラの住人にとっては都合が良いのです。

しかし最大限シナジーを実現しようと思ったら完全に融合する必要があるに決まっています。チェンバース氏が言うようにそれが世界標準だし、日本企業同士のM&Aでもいつかはそれが
普通とされるようになるように思います。

それがいつのことかは分かりませんが・・・。

【リンク】

なし