キリン・サントリー、統合断念

国内食品最大手のキリンホールディングスと同2位のサントリーホールディングスは8日、経営統合交渉を終了すると発表した。同日午前、両社トップによる会談を開いて交渉の中止を決めた。統合比率や新会社におけるサントリーの創業家一族の権利などについて溝が埋まらず、基本方針が一致しないまま交渉を続けては既存事業への影響が大きいと判断した。
NIKKEI NET 2010年2月9日

【CFOならこう読む】

やっぱりな、というのがこのニュースを聞いたときの最初の感想です。

もともとこのディールに関しては、その実現可能性も含めて僕は懐疑的に見ていました。ただあまり批判的なことを言うのもどうかと思い、このブログでもABSの講義でも一切ふれないことにしていました。

日本のM&Aはまだまだ未熟です。

死に体の会社を売買する事例はたくさんありますが、株主価値創造のために元気な会社同士がひとつになるという例はいまだ非常に少ないと言えます。

キリンに限らず多くの日本の上場会社は株主価値創造を志向してきませんでした。
しかし元気な会社同士がひとつになるためには、判断の基準となるしっかりとした軸が必要です。

その軸は株主価値をおいて他にはないと思うのです。

キリンの条件交渉は、自社の株主の利益のためというより、リアルな大株主となるサントリー創業家の持分希薄化を目的に行なわれたように思われます。

株主価値創造という軸があれば、サントリー創業家が拒否権を持とうが持つまいが大きな問題ではないと私は思うのですが、キリンにとっては大問題だったようです。

「「経営の独立性、透明性を維持するために、新会社を上場公開会社とすることで交渉を進めてきたが、経営のあり方について認識が一致しなかった」。キリンの加藤社長は会見で淡々と語った。

これに対して佐治社長はこう言う。「サントリーの経営は透明だ。何をもって透明性というのかわからんね。結局、(創業家が)サイレントマジョリティーでいてほしいということと、いざとなればモノを言いますよというところの差ではないか」(日本経済新聞2010年2月9日3面)

多くの上場会社がサイレントな株主を歓迎している中、モノを言うリアルな株主の存在にはどうしても抵抗があると言うことなのでしょう。

株式会社というのは、株主が取締役を選任し、取締役が執行役員を選任しそれを監視するという統治機構を持っているのですから、いざとなれば株主がモノを言うのは当然のことだと思うのですが・・・。

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