JCOM株、住商がTOBへ KDDIに対抗

住友商事がCATV最大手ジュピターテレコム(JCOM)のTOB(株式公開買い付け)を実施する方向で最終調整していることが9日明らかになった。JCOMを巡ってはKDDIが米メディア大手から同社株を大量取得する方針を打ち出している。JCOMをメディア事業の中核に位置付ける住商は対抗して持ち株比率を引き上げ、JCOMの筆頭株主の地位を目指す。住商とKDDIの間でJCOMの経営権の争奪戦に発展する可能性もある。
NIKKEI NET2010年2月10日

【CFOならこう読む】

「住商は現在、JCOM株を実質27.7%保有する第2位株主。KDDIの出資でJCOMの経営への影響力が弱まることを防ぐためにTOBに乗り出す。金融庁など当局の認可を取得でき次第、すみやかにTOBを実施する可能性が高い」(前掲紙)

先日、KDDIは金融庁の指摘を受けて取得比率を3分の1以下に引き下げる調整を進めていると明らかにしています。

しかし、3分の1を超える部分(約4.5%分)の引受先について、取引金融機関などと協議を始めているとの報道もあり、「筆頭株主にはこだわらない」(前掲紙)というのが本音とは思えません。

ところで、KDDIが主導で株式の引受先を探しているということであるなら、その引受先は特別関係者として公開買付規制の対象となる可能性があるように思います。

「特別関係者とは、株券等買付者以外の第三者に株券等買付者と同視するための概念であり、株券等所有割合の計算において算定対象となる」(ANALYSIS 公開買付 商事法務 アンダーソン・毛利・友常法律事務所編)

特別関係者には資本関係や血縁関係などの形式的な関係に基づく形式的基準による特別関係者(金商法27条の2第7項1号)と、株券等の譲渡に関する合意や対象者の議決権の行使について合意等があることに基づく実質的基準による特別関係者(法27条の2第7項2号)がありますが、JCOM株の引受先が実質基準による特別関係者に該当する可能性があると思うのです。

「(a)(ア)、(a)(イ)、または(b)のいずれかに該当する場合、実質的基準による特別関係者に該当する。なお、(a)または(b)の合意が成立した時点で、株券等買付者との間で(a)または(b)の合意を行なった者は、株券等買付者の実質的基準による特別関係者となる。
(a) 株券等買付者との間で、(ア)共同して当該株券等を取得しもしくは譲渡すること、または(イ)共同して当該株券等の発行者の株主としての議決権その他の権利を行使することを合意している者(b) 株券等買付者との間で、当該株券等の買付け等の後に相互に当該株券等を譲渡もしくは譲り受けることを合意している者」(前掲書)

引受先が特別関係者であるということになれば、TOBを実施しないことが引き続き問題となると思います。住商との主導権争いも勃発し、KDDIは非常に難しい局面に立たされたと言えます。

【リンク】

ANALYSIS公開買付け ANALYSIS公開買付け
アンダーソン毛利友常法律事務所

商事法務 2009-08
売り上げランキング : 232729

Amazonで詳しく見る by G-Tools