パイオニアの第三者割当増資、発行価格170円??

パイオニアは5日、ホンダに対する第三者割当増資の払込期日を23日にすると発表した。2009年4月の計画発表以来、ホンダは増資の引受時期を先延ばししていた。公募増資も含めた一連の資金調達がすべて実施される見通しとなり、調達総額約350億円になる。
(日本経済新聞2010年3月6日15面)

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ホンダの出資額は約25億円で出資比率は4.5%になる見通し。パイオニア株の発行価格は、昨年4月に取締役会で決議した170円となる予定。公募増資や三菱電機、三菱化学に対する第三者割当増資の発行価格(332円)を下回る。

これは有利発行ではないのか?

証券業協会の「第三者割当て増資の取扱いに関する指針」いわゆる自主ルールは有利発行か否かの判断基準となる公正価額を次のように指示しています。

「発行価額は、当該増資に係る取締役会決議の直前日の価額に0.9を乗じた額以上の価額であること。ただし、直近日又は直前日までの価額又は売買高の状況等を勘案し、当該決議の日から発行価額を決定するために適当な期間(最長6ヶ月間)をさかのぼった日から当該決議の直前日までの間の平均の価額に0.9を乗じた額以上の価額とすることができる」(前掲紙)

昨年4月のプレスリリースで発行価額の算定根拠が次のように説明されています。

「発行価額(会社法上の払込金額)は、平成21年1月28日から平成21年4月27日(取締役会決議の前日)までの3か月間の東京証券取引所における当社普通株式の普通取引の終値の平均値である170円(円未満切捨て)といたしました。なお、この発行価額は、平成21年4月27日(取締役会決議の前日)の当社普通株式の普通取引の終値364円に対し、53.3%のディスカウントとなります。当社取締役会としましては、昨今の不安定な株式市場や、当社の株価が直近で大きく変動していることを考慮し、公正な発行価額を決定する上で、取締役会決議日の前日という特定日の株価を使用するよりは平均株価という平準化された値を参考とする方が算定根拠として客観性が高いと判断し、また、業績に関する直近の開示である平成21年3月期連結業績予想の修正を発表した本年2月12日およびその直後の相応の期間をカバーする株価を考慮するのが妥当と全会一致で判断し、これらを勘案した結果、発行価額を上記のとおり過去3か月間の平均株価である170円といたしました。この発行価額については、当社監査役も全員一致で妥当と判断しております。なお、当該発行価額は、日本証券業協会の「第三者割当増資等の取扱いに関する指針」に準拠した方法により算定しております」

またその時点で、発行予定期間を効力発生予定日から1年を経過する日まで (平成21年5月9日~平成22年5月8日まで)とする発行登録が行なわれています。したがって違法性はないのでしょう。

しかし、釈然としない思いは残ります。以下、昨年6月20日の日経新聞の記事です。

「パイオニアは19日、ホンダを引受先とする25億円の第三者割当増資を延期すると発表した。当初は6月末をメドにホンダが資本参加、出資比率6.5%の第2位株主になる予定だった。パイオニアは公的資金による一般企業への資本注入制度を活用する方針を固め、調整を進めている。金融機関などとの交渉状況を踏まえ、ホンダの出資も詳細を決める見通しだ」

諸々の条件が整わなければ出資の取り止めもあり得たということです。

そうであるなら昨年4月の時点で、一種のオプションがホンダに付与された見ることもできるでしょう。
新株予約権の無償割当は有利発行となり得るのと比べ、衡平性に欠くと思います。

【リンク】

平成21年4月28日「第三者割当による新株式発行および新株式発行に係る発行登録に関するお知らせ」パイオニア株式会社[PDF]