退職給付引当金、積み立て不足一括計上へ

上場企業が社員の年金や退職金の支払いに備えて積み立てるべき額の不足分に関する会計処理が大きく変わる。2012年3月期から積立不足額を全額、負債として計上する。会計基準の国際化に伴う措置で多額の積み立て不足を抱える企業は自己資本が減少して財務が悪化する。企業年金の給付水準や資金運用手法の見直しにつながる可能性がある。
(日本経済新聞2010年3月12日1面)

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IFRSとのコンバージェンスの一貫としての改正です。

IASBは、数理計算上の差異について、すべてを費用として当期純利益に反映させることで合意していましたが、11月会議においてこの方向性をとりやめ、その他の包括利益(OCI)に計上することで合意されました。

「11月会議では、遅延認識に係る選択肢を廃止し、即時認識する場合の方法に関し、包括利益計算書の「その他の包括利益(OCI)のセクションに、年金の再測定を表示しなければならないことを公開草案で提案することで合意している」
(週刊経営財務 No.2945 2009年12月7日 6頁)

公開草案を見ていないので、改正の詳細はわかりませんが、同様の改正が行なわれるものと思われます。

今日の新聞記事では、資本への影響という意味で繰延税金資産についても言及されています。

「実際には将来支払う税金分を調整する手続きが生じる。50億円は将来の費用とみなされる。実効税率40%を前提にすると50億円の40%に相当する20億円が将来、税負担が軽減される分となり繰延税金資産と資本に計上される。
税効果会計では将来、課税所得が見込めないと税金の軽減効果も生まれないため、赤字企業では繰延税金資産を計上できない場合もある」(日本経済新聞2010年3月12日14面)

「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」は、重要な税務上の繰越欠損金が存在する会社(非経常的な原因により発生したもので、それを除けば課税所得を毎期計上している会社を除く)翌期において税務上損金算入が見込まれる部分のみ回収可能、過去連続して重要な税務上の欠損金を計上している会社については回収可能性は認められないとの判断指針を示しています。

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