消費・所得税上げ必要?

政府税制調査会の専門委員会は月内をメドに消費税や所得税を増税する必要性を明示した論点整理をまとめる検討に入った。神野直彦委員長(東大名誉教授)は17日、菅直人財務相ら税調幹部に論点整理のたたき台を説明した。福祉の充実などには、所得税と消費税を税収の「車の両輪」と位置付ける税制抜本改革が必要だと指摘。過去の減税で財源確保が困難になった現行税制を、所得税と消費税で立て直すべきだとの考えを示した。
(日本経済新聞2010年5月18日5面)

【CFOならこう読む】

この記事のとなりには、”法人税下げても税収増”という見出しが踊っています。

「経済産業省の分析によると、EU15ヶ国では1995年から2007年にかけて法人税の実効税率が37.7%から28.7%と9ポイント下がった。この一方で、GDPに占める法人税収の割合は逆に2.2%から3.2%に上昇。税率引き下げが税収を押し上げるパラドックスが生じる理由について、経産省は税負担の軽減が企業の投資や雇用を促し、成長の基盤を整えたとみる」(日本経済新聞2010年5月18日5面)

そしてたまたま僕のデスクの上にはEUの有害な租税競争に関するJETROのペーパー(JETRO ユーロトレンド 2001.11)が乗っていて、そこにはこんな風な記述があります。

「各国が雇用の確保などの観点から金融その他のサービス産業といった、いわゆる「足の速い」経済活動を国外から租税優遇措置を競って導入した結果、可動性の低い労働や消費に対する重課というかたちで課税の公平性、中立性が損なわれ、資本の移転や経済活動に歪みが生じるといった観点から、租税競争に対する国際的な協調が、近年問題となっている」

10年遅れて日本も漸くこの競争に参入しようとしているんだなあ、と今日の新聞の見出しを俯瞰で読んで、そんな風に感じました。

EUではその後何が有害であるかの基準について合意できず、「有害な租税競争」を排除する取り組みは停滞しています。

日本が租税競争に参戦することには賛成なのですが、それが何を目的とするものであるのかについてコンセンサスが得られていないのは大きな問題だと思います。

JETROのペーパーでは、まず始めに「雇用の確保」と書かれています。ところが今日の記事のどこを読んでも「雇用の確保」とは書かれていません。せいぜい「海外企業の進出意欲を高める効果があるという」という記述がある程度です。

目的が「雇用の確保」にあるのなら、日本企業の投資促進だけでなく、外資を国内に呼び込むことが非常に重要だと思います。そしてそのためには、法人税軽減以外にもやることがたくさんあると思うのです。

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