法人税まず5%下げへ

直嶋正行経済産業相は10日、日本経済新聞のインタビューに応じ、「法人税の税率を来年度にまず5%下げる必要がある。税制の抜本改革の議論を待つのでなく、成長戦略の一環として決断すべきだ」と強調した。
月内に政府全体でまとめる成長戦略では、環境、介護、医療(健康)、観光、アジア、科学技術、雇用・人材の6本柱に加えて「個人金融資産の活用など金融分野の活性化が不可欠だ」との考え方を示した。

(日本経済新聞2010年6月11日5面)

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「経財相は「法人税の高さが指摘され始めてもう10年はたつのに、日本はいっこうに動いていない。それが海外にはマイナスのメッセージになっている」と指摘。早期の税率下げで、日本の国際競争力回復や外資企業の日本への投資増につなげる考えを示した」(前掲紙)

日本の国際競争力と外資企業の日本への投資誘因という議論を同列に論じるべきではありません。

日本の国際競争力という点では、日本の法人税が現在採用している全世界所得課税方式から国外源泉所得非課税方式(テリトリアルシステム)に移行することが必要でしょう。

後者であれば国外で稼いだ所得にかかる税金は、その国の課税で完結するので、現地の製造者との競争において大きな不利益になることはないのです。

一方外資企業の日本への投資誘因という意味では、法人税の減税は有効でしょうが、それだけではもともとコストの高い日本への投資を促進することは難しいでしょう。何より株式持ち合い、買収防衛策、第三者割当増資の容易さ等が外資の誘因には大きな障壁になっています。

この点、役所も含め”外資の脅威から日本企業を守る”というメンタリティーからの脱却が重要なテーマになると思います。外資が日本企業から技術を強奪し、日本には何も残らなくなる、だから外資から日本企業を守らなければならない、という情緒的な議論がいまだに聞かれますが、それでは幕末の攘夷論と大差ありません。

ヒトもモノもカネも国境を越えることを前提に国家戦略は構築されるべきです。

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