JXホールディングス、「負ののれん」2,265億円

JXホールディングスは経営統合に伴い、鉱業権の時価評価などで発生した「負ののれん」計2,265億円を2010年4月〜6月期連結決算の特別利益に計上した。4月に導入された新しいM&A会計のルールに基づき、引き継ぐ企業の資産や負債を統合日時点の時価で反映させる必要が生じたためだ。
(日本経済新聞2010年8月18日15面)

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会社は、平成22 年4 月1 日公表の「平成23 年3 月期の業績予想について」において、経営統合に伴う負ののれんが1,800 億円発生する見込みであるとともに、資産および負債の時価評価作業中である旨リリースしておりましたが、8月3日公表の「特別利益(負ののれん発生益)の確定に関するお知らせ」では、2,265億円で確定したと公表しています。

資産の時価評価の結果含み益が顕在化し、純資産が膨らんだために、純資産と買収価額との差である負ののれんも膨らんだということです。

「今回計上した負ののれんは大きく分けて2つ。まず統合した4月1日時点の新日鉱の株式時価総額と簿価純資産の差額として1,634億円。加えて新日鉱が保有していた油田や鉱山を開発する権利(鉱業権)や土地、上場株式の時価評価に伴う631億円も計上した。うち鉱業権は400億円前後とみられ、「銅価格や将来のキャッシュフローを保守的に見積もって算定した」(杉内清信専務)」(前掲紙)

つまり、2,265億円と1,800億円の差はほぼほぼ鉱業権の価額というわけです。

本件については、4月2日にポスティングしました(https://cfonews.main.jp/cfonews/?p=1888)。そこで新会計基準33項に記載されている次の項目は非常に重要である旨書きました。

33項の内容は次の通りです

「(1) 取得企業は、すべての識別可能資産及び負債が把握されているか、また、それらに対する取得原価の配分が適切に行なわれているかどうかを見直す。
(2) (1)の見直しを行っても、なお取得原価が受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額を下回り、負ののれんが生じた事業年度の利益として処理する」

この規定の趣旨は負ののれんを安直に計上せずに、痛んでいる資産や未計上債務があればそれをバランスシート上顕在化した上で残額を負ののれんを計上しなさいというものですが、本件のように時価評価の結果さらに負ののれんが膨らむということもあり得るわけです。

なお、平成22年4月1日以降実施される企業結合から適用される新しい企業結合に関する会計基準では、負ののれんを従来の規則償却から一括特別利益計上に変更しています。

【リンク】

2010年8月3日「特別利益(負ののれん発生益)の確定に関するお知らせ」JXホールディングス株式会社[PDF]