今日の経済教室

中小企業の高成長実現に CFOの存在が不可欠 忽那憲治神戸大学教授

筆者のかつての分析では、中小企業の成長に大きな影響を与えていたのは、資金調達に関連するものでは外部株主の導入と計画の作成という2つの要素だった。今回の7社へのヒアリング調査でも、高成長中小企業にはこうした特徴が顕著に見られた。だがその背後には社長以外で経営に携わるスタッフの存在、具体的にはCFO人材の加入がかかわっており、高成長を達成する上での重要な要因となっていることが明らかになった。

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忽那教授はベンチャー経営研究の分野でとても有名な学者です。忽那教授はCFOの必要性について次のように述べています。

「技術ベースのベンチャー企業の場合、ファイナンスに関する知識が不足していることが多い。そうした場合、事業のリスクを分析したうえで、成長資金の調達のための資本政策を作成し、事業計画書にまとめ、実行できる経営レベルの人材が重要になる。これがCFOである。」

そしてCFO人材の加入が大きな効果を生んだ次の事例を紹介しています。

「電子商取引関連事業を営むビックタウン(東京・中央)は2年前に同社の顧問税理士A氏を財務担当役員のCFOとして迎え入れた。創業当初は政府系金融機関に2千万円の融資を申し込んでも、5百万円しか調達できないような資金繰りだったが、A氏の参画以降、銀行からの借入れが楽になったという。株式公開を目指すようになった同社は、事業計画書を作り直し、これがVCから高く評価され、多くのVCから投資提案が舞い込んだ。
だが順調な事業拡大で資金繰りが良好だったため、このCFOは「事業をさらに軌道に乗せ、時価総額を上げた後に、より有利な条件でVCから資金を調達した方が得策」と判断。VCなどへの第三者割当増資で20007年3月に1億5千万円を調達した際は、時価総額を10億円にまで高めた段階で実施したため、VCの保有比率は13%程度に抑えることができた。財務担当者が会社に加わることで、銀行との融資交渉が円滑になっただけはでなく、VCからの資金調達でも既存株主の保有比率の低下を抑えることができたわけだ。」

忽那教授の議論は全く的を得ていますが、高成長中小企業にCFOが必要であるということを言っているのであって、良いCFOがいれば成長できると言っているわけではないことに注意する必要があります。高成長企業だからこそCFOの活躍できる機会があるのです。CFO自信もこの辺りを見据えたうえで、仕事場を選択する必要があると思います。

それから忽那教授はCFOの職能として資金調達に焦点を絞った議論をしていますが、これは中小企業のCFOとしてはとても重要ではありますが、上場企業のCFOまで含めてその職能を考えると、M&A、配当政策立案、資本コスト管理、投資の採択、IR、リスク管理、税務戦略、システム構築等カバーしなければならない範囲は非常に広く、必ずしも資金調達がCFOにとって最も重要な仕事というわけではないという点にも留意が必要です。

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