自己株TOBはディスカウントした価格によらなければならないか?

ABCマートは、ユナイテッドアローズ(UA)が8月末から実施したTOBに応じ、9月下旬までに保有株(発行済株式数の2割強)のほぼすべてを売却した。ABCマートは2009年にUA株を取得し、筆頭株主となっていた。

【CFOならこう読む】

UAの自己株TOBの概要は8月31日にポストしました(「Uアローズ自己株TOB、エービーシー・マート保有株全株売却へ」)。

UAの自己株TOBはディスカウントTOBであったわけですが、結果としては10,700,000株の買付予定上限株数に対し10,953,000株の応募があり、あん分比例による買付となりました。

ABCマートは保有していた10,400,200 株全株の応募に対し、あん分比例により譲渡が確定したのは10,160,000株で240,200株の手残り株が生じます。

ところで自己株TOBをプレミアムを付した買付価格で行なってはまずいのではないかという議論があります。つまり株主価値を上回る価格で自己株買付を行なうと、一株当たりの会社の価値が低下し、応募しなかった株主に対して損害を与えるのではないかという議論です。

これに対し、このような反論がなされています。

「その時点の株価に対してプレミアムを付したからといって、一株当たりの会社の価値を上回る金額になるとは限らない。また、仮にこれを上回っていた場合についても、自社株公開買付けは、公開買付規制に従った情報開示を行った上ですべての株主に平等に売却の機会を与えて行われ、また、応募が多数となった場合にはあん分比例により平等に買付け等が行われるものであるから、原則として、株主に対して損害を及ぼすものではないと考えることも可能であろう」(「公開買付けの理論と実務」長島・大野・常松法律事務所編 商事法務 356頁)

私もこの見解に賛成です。
商事法務No.1832において野田昌毅弁護士が同様の見解を寄せています。

なお本件は税務上も言及すべき論点があるのですが、また別の機会に取り上げます。

【リンク】

2010年9月30日「自己株式の公開買付けの結果及び取得終了に関するお知らせ」株式会社ユナイテッドアローズ [PDF]

2010年9月30日「株式会社ユナイテッドアローズによる自己株式の公開買付けへの応募結果に関するお知らせ」株式会社エービーシー・マート [PDF]