優先株式の評価-三洋電機のケース

パナソニックの三洋買収 金融3社の売却価格 焦点

パナソニックが三洋電機の子会社化で大筋合意したことで今後、三井住友銀行など金融三社が保有する優先株の売却価格が焦点となる。4日の東京株式市場では両社とも株価が上昇したが、市場の株価を基に価格算出を主張する金融機関と、株価の希薄化リスクを考慮すべきだとするパナソニックとの議論が残っている。
(日本経済新聞 2008年11月5日 9面)

【CFOならこう読む】

「買い手側からみると現在のPBRやPERが同業他社より高いことから判断して、株価は希薄化を織り込んでおらず、実際より割高な状態だとみている。一方、売り手からすると優先株転換で発行済株式数が増える可能性は発行時から分かっており、現在の株価は希薄化を織り込んだ上で成長性などを評価してついているとみる。そのため現在の株価にプレミアムを付けて売却したい考えだ。」
(前掲)

理論的には売り手が言うように、発行時に希薄化は織り込まれたと考えるべきですが、このケースでは次のような株式保有義務が買い手側に課されている点を考慮すべきです。

「資本金払い込み後、二年間はGSと大和証券SMBCグループが議決権ベースで四九%の優先株を保有するよう義務づけている。しかし、その一年後には保有義務が三四%に下がり、さらにその後は〇%。つまり三年を過ぎた時点で出資者側は自由に普通株に転換し、売却できるようになる。」
(日経産業新聞 2006年2月1日 24面)

初の2年間とは、平成2008年3月13日まで、その1年後とは平成2009年3月13日です。つまり、転換に制限を設けて希薄化が起こりにくい仕組みにしたのです。
発行時の市場価格(2006年1月25日終値348円)を大幅に下回る価格で優先株が発行(普通株に換算した発行価格は70円)されたので、希薄化を抑える必要があったのです。

2009年3月13日の期限を迎えていない現時点で、希薄化が完全には株価に織り込まれていないというパナソニック側の主張に分があるように思います。

【リンク】

平成17年12月21日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2005/di-1221-1.pdf

平成18年1月25日「第三者割当による新株式(優先株式)発行の基本合意に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0125-1.pdf

平成18 年2 月14 日「第三者割当による新株式(優先株式)の発行にかかる覚書締結に関するお知らせ」三洋電機株式会社
http://www.sanyo.co.jp/ir/library/pdf/disclosure/2006/di-0214-2.pdf