親子上場件数減少(2008年12月末時点)

「親子上場」が減少 経営効率化狙い完全子会社に

親会社と連結子会社とがともに上場する「親子上場」の件数が減っている。2008年12月末時点で399件と2008年3月末から13件減少した。親会社がグループ経営の効率化を狙って完全子会社にするケースが目立つ。
(日本経済新聞2009年1月21日16面)

【CFOならこう読む】

EVAの伝道師として有名なベネット・スチュワートが、自著『EVA創造の経営』の中で、子会社の部分公開は親会社の株主にとってデメリットが大きいと結論づけています。

その理由として次のものを挙げています。

①公開を維持するためのコストが重複
②親子会社間の取引の公平性の確保が難しい
③子会社独自の取締役会が必要になり少数株主の権利の尊重が必要
④親会社が直接ファイナンスする場合よりもコスト高になる場合が多い
⑤連結納税対象から外れる

米国では子会社の部分公開は少数の利用に止まり、優良大企業の間では子会社は100%所有するというのが大原則です。

今日の記事にあるように、日本では子会社の知名度向上や株式売却益などを目的に親子上場は1986年から2007年3月末はほぼ一貫して増えて来ました。

e0120653_10563489

「減少の背景には、利益相反を招く可能性があるとして、東証などが2007年秋に親会社と事業内容などが類似した主要子会社の上場を慎重に判断する方針を示したことがある。」(前掲紙)

東証は、2007年10月30日に、「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」で次のような方針を示しています。

「昨今、親会社と実質的に一体の子会社、若しくは中核的な子会社(親会社グループの企業価値の相当部分を占めるような子会社)の上場意向が散見されております。
このような中核的な子会社の子会社上場は、証券市場において実質的には新しい投資物件であるとは言えず、また、上場している親会社が企業グループの中核事業を担う子会社を上場させて新規公開に伴う利得を二重に得ようとしているものではないかと考えます。

このような状況から、例えば、事業ドメイン(事業目的・内容・地域等)が極めて類似している子会社や、親会社グループのビジネスモデルにおいて、非常に重要な役割を果たしている子会社、親会社グループの収益、経営資源の概ね半分を超える子会社などのいわゆる中核的な子会社の上場については各企業グループ、子会社の事業の特性、事業規模、過去の業績の状況、将来の収益見通し等を総合的に勘案しながら、慎重に判断していくことといたします。」

子会社公開は、親会社の資金調達を目的としている場合が多いと思われますが、子会社上場の際、高PERがつく場合、それは子会社の高成長性が評価されたもので、一般投資家は自己の資金がこの高成長事業に投入されることを期待して投資するのです。したがって親会社にキャッシュを横流しにするだけの子会社公開は、一般投資家との間で重大な利益相反が生じます。したがって事業ドメインが類似しているか否かに関わらず親子上場には問題があると私は思います。

【リンク】

2007年10月30日「中核的な子会社の上場に関する証券取引所の考え方について」株式会社東京証券取引所