不動産流動化の要件-ビックカメラのケース

ビックカメラが3億円所得隠し 国税局指摘

家電販売大手「ビックカメラ」(東京都豊島区)が東京国税局の税務調査を受け、06年8月期までの4年間で約3億3千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。取引先を経由して関係会社に支払った業務委託料について、対価性がなく「寄付金」であると認定された模様だ。
http://www.asahi.com/national/update/0714/TKY200807140272.html

【CFOならこう読む】

この事件、裏金3億円では済まない可能性があります。

2002年8月、ビックカメラは、東京・池袋本店と本社ビルを2002年8月に特別目的会社である有限会社に290億円で売却し、この有限会社が不動産を担保に、小口の証券を発行、販売しました。いわゆる「不動産の証券化」です。

記事によると、同社元社員が経営に携わっていた「豊島企画」(同渋谷区)も100億円近く出資していたということです。

特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(会計制度委員会報告第15号)は、流動化の要件として、リスク負担の金額の割合が流動化する不動産の譲渡時の適正な価額(時価)の5%以内であることを求めています(第13項)。そしてこの計算には譲渡人の子会社又は関連会社が負担するリスクを含めなければならないことになっています(第16項)。

ビックカメラは14億5千万円の劣後出資を行っています。この金額は流動化した池袋本店と本社ビルの時価290億円のちょうど5%に当ります。豊島企画が子会社であるということになると流動化の要件を満たさなくなるのです。豊島企画はビックカメラの子会社ではないとの外形を作り出すための裏金である可能性を指摘しているのが上記記事なのです。

ビックカメラは、今年東証一部に上場していますが、その直前に、売却した不動産の買い戻しを行い、流動化の際に出資した匿名組合の清算配当金約五十億円を特別利益に計上しています。

【リンク】

2008年7月14日「当社に関する一部報道について」株式会社ビックカメラ
http://www.biccamera.co.jp/ir/report/20080714.html

平成19年10月26日「特別利益の計上に関するお知らせ」株式会社ビックカメラ

http://www.biccamera.co.jp/ir/news/pdf2007/20071026news.pdf