中期の財務目標数値
原材料や円高などが響き、2009年3月期の7期ぶりの経常減益が濃厚な上場企業。収益トレンドが下降局面に入り、3〜5年前につくった中期経営計画の目標達成が危うくなる企業も出そうだ。中期計画の進捗、達成度合いは投資材料としての重みを増している。「たかが中計」と済まされない時代。株式時価総額が大きく市場関係者の注目度が高い20社について、2007年度実績と2008年度予想をもとに中期計画を検証してみた。(日経ヴェリタス2008年7月6日 11面)
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各社どのような財務目標を設定しているか、次の表にまとめてみました。
ROEやROAといった投下資本の効率性を測る指標を財務目標として設定する会社がまだまだ少ないことが表からわかります。
ROEはいくつかの欠点が指摘されるものの、株主価値重視の経営に最も親和性がある指標と言えます。
その理由は次の通りです。
一定成長配当割引モデルを用いると、株式の価値は次のように表されます。
P= D1/r−g = D0(1+g)/r−g
ただし、
P=株式の理論価格
Dt=t期の配当の期待値
r=株主の期待収益率(株主資本コスト)
g=配当の期待成長率
ここで、前期の配当(D0)はすでに決まっているので、株価を決定するのは、その他の2変数(r, g)と考えることができます。このうち、株式の期待収益率rは企業の事業リスクや財務リスクに基づいて資本市場で決定されると考えられます。
一方、配当の期待成長率gは次の内部成長率(増資なしに達成できる1株当たり利益の成長率)の式によって決まると考えられます。
g=ROE・(1−d)
ただし、
ROE=株主資本税引後利益率
d=配当性向
内部成長率を決定する変数のうち、配当性向は長期的には大きく変わらないとすれば、高い水準のROEを維持することが利益・配当の成長のために重要になります。一定配当成長モデルと内部成長率の考え方を前提とすれば、ROEが高ければ株価が高くなるという関係が成立します。
以上述べた理由から、ROEこそ株主価値創造の成果を測る上で最も重視すべき指標であるといえるのです。
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