ケンウッド・ビクターの統合効果

負ののれん代&節税で100億円

ケンウッドと日本ビクターが10月に統合して発足する持株会社「JVC・ケンウッド・ホールディングス」は、統合で発生する「負ののれん代」の償却にかかる利益や節税効果が当初3年間で100億円程度にのぼる見通しだ。現在は事業上の相乗効果の見通ししか発表していない。2009年3月期の連結純利益を15億円程度、2011年3月期は50億円程度押し上げる要因となりそうだ。
(日本経済新聞 2008年6月5日15面)

【CFOならこう読む】

5月14日の当ブログで、ケンウッドが何故会計上取得企業となるのかということについて書きました(https://cfonews.exblog.jp/7935121/)。
今日は、この案件の節税効果について書いてみます。

記事によると、

「節税効果も大きい。新会社はケンウッドが導入していた連結納税を継続する。ビクターは導入しておらず子会社が約10億円の税金を支払っていた。新たに導入すればビクター本体の税務上の欠損金を活用できるため税負担がなくなる。
同じように税務上の欠損金を抱えるケンウッドは2010年3月期に欠損金が解消されそうだが、引き続き、グループ会社となるビクターの欠損金を活用し20億円弱の節税効果が見込める。2011年3月期にはグループ全体で合計30億円の節税効果が発生する計算になる。」

とあります。

連結納税制度下では、連結納税前に生じた欠損金は原則としてすべて切り捨てられます。ただし特例としてみなし連結欠損金という規定が設けられていて、一定の場合に繰越控除の対象となります。

法人税法81条の9第二項二号イ及びロは、株式移転の場合に、次の欠損金について、連結欠損金とみなして繰越控除の対象とすることができるとしています。

「最初連結親法人事業年度開始の日の5年前の日から当該開始の日までに行われた株式移転にかかる完全子会社であった連結子法人の当該開始の日前7年内開始の各事業年度における青色欠損金額、または、最初連結親法人事業年度開始の日前7年以内に開始した連結子法人のその承認にかかる連結事業年度において生じた当該連結子法人の連結欠損金個別帰属額」(租税法 金子宏著 弘文堂)。

非常にわかり難い規定ですが、要するに、株式移転において完全子会社となった法人の単体納税の時期に生じた繰越欠損金と、もともと連結納税を行っていた連結グループの連結親法人が、株式移転により完全子会社となった場合に、その法人が有している連結欠損金は、連結所得計算に持ち込んで繰越控除できる、と言っているのです。

ビクターは前者、ケンウッドは後者に該当するので、両者の繰越欠損金の節税効果が見込めることになるのです。

【リンク】

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