退職給付会計基準の改正

退職給付債務の算定のカギを握る「割引率」の決定方法が2010年3月期から変わる。現在は長期国債の5年間の利回りを基準に決定する方法になる。直近の経済情勢を反映したルールに変わることで、期末の国債利回りの水準次第では割引率が低下し、退職給付費用も膨らみかねない。
(日本経済新聞2009年4月11日 14面)

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退職給付債務の計算における割引率の取扱いについて、「退職給付に係る会計基準注解(注6)の定めが次のとおり改正されました(企業会計基準第19号 「退職給付に係る会計基準」の一部改正(その3))。

(注6)安全性の高い長期の債券について
割引率の基礎とする安全性の高い長期の債券の利回りとは、期末における長期の国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。

改正前は次の通りでした。

(注6)安全性の高い長期の債券について割引率の基礎とする安全性の高い長期の債券の利回りとは、期末における長期の国債、政府機関債及び優良社債の利回りをいう。なお、割引率は、一定期間の債券の利回りの変動を考慮して決定することができる。

要するになお書以下が削除されたということです。

「退職給付債務は本来、国債などの実勢利回りに応じて割引率を見直すのが原則。ただ、退職給付債務が10%以上変動しなければ割引率を事実上変更する必要がないとする「重要性基準」を理由に、現状では割引率を見直さない企業が少なくない。」
(今日の新聞記事)

この点は「退職給付に係る会計基準注解(注10)」及び「退職給付会計に関する実務指針18項」に次の規定があることを指して言っているのです。

退職給付に係る会計基準注解
(注10)基礎率の見直しについて
割引率等の基礎率に重要な変動が生じていない場合には、これを見直さないことができる。

退職給付会計に関する実務指針
18 割引率変更の要否
割引率は安全性の高い長期の債券の利回りを基礎として決定されるが、各事業年度において割引率を再検討し、その結果、割引率の変動が退職給付債務に重要な影響を及ぼすと判断した場合には、退職給付債務の再計算が必要である。
重要な影響の有無の判断に当たっては、前期末に用いた割引率により算定されている退職給付債務と比較して、期末の割引率により計算した退職給付債務が10%以上変動すると推定される場合には、重要な影響を及ぼすものとして期末の割引率を用いて退職給付債務を再計算しなければならない(期末において割引率の変更を必要としない範囲については、資料3が参考となる。)。

資料3によると、例えば割引率が2.5%で平均残存勤務期間が15年の場合、期末において割引率の変更を必要としない範囲は、1.9%~3.2%となります。

なお、本改正は平成21年4月1日以後開始する事業年度の年度末に係る財務諸表から適用になります。

【リンク】

平成20年7月31日「企業会計基準第19号「『退職給付に係る会計基準』の一部改正(その3)」の公表」企業会計基準委員会