丸三証券の新型買収防衛策

買収者に対価支払わず 新型防衛策 丸三証券が導入

敵対的買収者に金銭など対価を支払わない新型の買収防衛策が登場する。丸三証券が導入する手法で、新株予約権を使って敵対的買収防衛者の株式持分を薄めても、対価を払わず、買収者自身に資金を回収させる仕組みだ。敵対的買収者に現金を払った昨年のブルドックソース以降、対価の支払いを明記する防衛策が増えたが、巨額の支払いを明記する防衛策が増えたが、巨額の支払いは企業価値を損なうとの批判が機関投資家から出ていた。
(日本経済新聞 2008年5月15日 16面)

【CFOならこう読む】

丸三証券のプレスリリースがまだ出ていないので、詳細は不明ですが、上記記事によると次のようなスキームであると思われます。

発行済株式総数 100万株、うち20万株を保有する敵対的買収者の持分を薄めるために、新たに会社は100万株の新株予約権を、敵対的買収者も含め全ての株主に対し発行する。このとき敵対的買収者は20万株の現物株と20万株の新株予約権を保有することになり、持分は20%で変わりません(=(20+20)/(100+100))。しかし買収者に割り当てた新株予約権の行使は、買収者が現物株を市場で売却した分だけしか認められません。

つまり2万株の現物株を市場で売却したならそれと同じ2万株だけ新株予約権の行使を認めるというものです。20万株の現物株を全株売却すると、20万株の新株予約権を行使できるので、買収者の手に20万株の現物株と20万株相当の現金が残ります。株価は半分になるので、結果として買収者に経済的損失を被らせることなく、持分を10%に薄めることができます。この方法ならブルドックのように、企業が新株予約権を買い取るために巨額の支払いをしなくてすむわけです。

この方法による希薄化効果は最大1/2しかないようにも思えますが(持株分の新株予約権の行使しかできないので)、そうではなさそうです。ブルドックのように発行済株式の3倍の新株予約権を発行した場合の効果はどのようになるでしょう。上の例でいうと会社が300万株の新株予約権を発行したなら、買収者は20万株の現物株と60万株の新株予約権を手にします。

20万株の現物株を市場で売却すると20万株の新株予約権の行使ができるので、20万株の現物株を手にすることができます。この現物株をまた市場で売却し、同数の新株予約権を行使するということを繰り返せば、最終的に買収者の手に残るのは20万株の現物株と60万株の現金ということになり、持分は5%にまで薄まります(=20/(100+300))。株価は1/4になるので、買収者に損得はありません(もちろん市場価格の一時的な高騰などがない場合の話です)。

それにしても日本だけでしか通用しない買収防衛策の設計のために頭脳とお金をつぎこむことにどれだけの意味があるのでしょう。早晩こんなものは通用しなくなるということがわからないのでしょうか?

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