M&A、本来は日本のお家芸(?)

日本企業の国際競争力低下の理由の1つに、企業の規模の小ささがある。株式時価総額で日本トップのトヨタ自動車ですら世界では30位である。会社の売買には否定的な声もあるが、戦前の日本はM&A大国だった。日本企業の再生は、M&A大国のDNA復活がカギだ。
(日経ヴェリタス2011年3月7日52面)

【CFOならこう読む】

「グローバルなハイテク時代において、M&Aは必要不可欠な経営戦略である。最近、日本でも新日本製鉄と住友金属工業の経営統合を始め、大型M&Aが増加する兆しがある。しかし、日本のM&Aは活発でない。10年末の世界に占める日本の株式時価総額構成比は8.5%だったが、世界のM&A金額に占める日本の構成比は5.9%(10年)にすぎない。歴代M&A金額上位20件のうち日本の事業会社同士の経営統合はKDDI、アステラス製薬しかない。
(中略)
戦前の日本はM&A大国だった。M&A大国のDNA復活が日本企業復活のカギを握ると思われる」(前掲紙)

日本でM&Aが少ないのは、ガバナンスの構造にあります。どれだけ経済合理性があっても、従業員にとって相対的にポストが減るようなM&Aは実行に移されないようなガバナンスの仕組みが日本的経営には埋め込まれているのです。

これを変えるにはDNAうんぬんというような情緒的な話をするより、起きるべきM&Aが容易に行えるような法制度を構築すべきです。第三者割当増資の比率の上限を引き下げる等経営陣/従業員が株主を選択できる仕組みを排除する、経営陣/従業員の保身につながらないような新たな買収防衛策のルールを設ける、社外取締役の増員を促す施策を講ずる等、立法や市場ルールで手当てできることがたくさんあります。

日本でこういう議論がなかなか進まないのは、すぐに資本の力で従業員を切り捨てることは許されないというような話になってしまうからです。しかし、従業員にしても沈没する船にしがみついていていても将来がないことは明々白々です。

ですから従業員にとっても起きるべきM&Aが起きないような仕組みは是正される必要があるのです。

それでは誰がこういう議論を主導すべきか?

本来的には政治の役割でしょう。
ですが、今の日本にはこういう議論を進められる政党がありません。

今の日本に必要なのは米国の共和党のような政党なのかもしれません。

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