ユーロ圏、法人課税ベース共通化へ

欧州連合(EU)のユーロ圏17ヶ国は財政・経済政策の新たな協調策で合意する。ギリシャの財政危機に端を発する信用不安を克服するには、各国が構造改革を進める必要があると判断した。財政赤字削減、法人税制、労働規則など各国が権限を握っていた分野に踏み込み、競争力を高める。ただ拘束力はなく実効性が課題となる。
(日本経済新聞2011年3月8日1面)

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「税制では法人税の課税ベースの共通化を目指す。配当所得など課税対象から控除できる品目をそろえたり、損金を翌期以降に繰り越せる制度を統一したりする。税率は加盟国の判断に委ねるものの、国ごとに異なり煩雑だった税務が減り、企業が国境を越えて事業展開をしやするなる」(前掲紙)

EUでは「4つの自由」、すなわち財・人・サービス・資本の自由な移動を保障する法的枠組みをつくっています。一方、加盟国の法人税制は自国の経済活動を有利にするため様々なインセンティブを設けています。欧州裁判所はこのようなEU加盟国の法人税制が内外無差別の原則に反するとの判定を次々と下してきました。そのような意味でEU加盟国の法人税制の調和化は喫緊の課題とされています。

ところで今日の記事によると税率については共通化を目指さないということのようですが、それでは内外無差別の原則を保障することはできないように思います。この点Yale大学のGraetz教授とHarvard大学のWarren教授の”Income Tax Discrimination and the Political and Economic Integration of Europe”(2006)という有名な論文は、所得の源泉地国の内外を問わず等しい課税、所得稼得者の居住地国の内外を問わず等しい課税、各主権国家が自由に税率を決定の3つの原則を同時に満たすことはできないということを数式により証明しています。

そうすると、税率については各国の判断に委ねたままでは、法人税についての根本的な問題は解決されない、ということになりかねません。

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