産業活力再生法改正、自社株対価のTOB活性化(エクスチェンジオファー)へ

企業の大型M&Aや事業再編の後押しを狙った改正産業活力法(産活法)が18日の参院本会議で可決、成立した。自社株を対価に使えるTOBを容易にするほか、合併審査で担当閣僚が公正取引委員会と協議して迅速な手続きを促すことなどが柱。日本企業の国際競争力の強化につなげる。経済産業省は7月上旬の施行に向けて準備を進める。
(日本経済新聞2011年5月19日4面)

【CFOならこう読む】

「自社株対価TOBを実施するには、これまでは対価となる株価を決めるため、株主総会での特別決議などの手続きが必要だった。今回の法改正では株式交換比率を決めるだけで済むようになり、自社株対価TOBが使いやすくなる。これに加えて、TOBに90%以上の株主が応じた場合、株主総会を開かなくても、少数株主から残りの株式を買い取れるようにする」(前掲紙)

金商法上自社株対価のTOBは実行可能ですが、ほとんど利用がありません。その理由は、自社株対価のTOBには、会社法上の現物出資規制と有利発行の問題( 西村あさひ法律事務所 弁護士・NY州弁護士 太田 洋「自社株を対価とする他社買収の規制緩和、産業活力再生法改正への期待」asahi.com 2011年1月11日)、及び応募株主に課税繰延措置が認められていないという課税上の問題(『公開買付けの理論と実務』長島・大野・常松法律事務所編 344頁)があるからです。

現物出資規制の問題とは、新株発行決議の日から払込日までの間に対象会社の株価が値下がりした場合に、価額填補責任が応募株主と買収会社の取締役に課せられる、というもので、対象会社の株式が上場会社の株式である場合には、これが自社株TOBを実行する上での大きな障害となっていた。

また有利発行の問題とは、プレミアムを付してTOBを行うと、買収会社の株価を有利発行することになり(買収会社の株価が100円で、対象会社の株価が300円のとき、33.3%のプレミアムを付し、対象会社の株式1株につき買収会社の株式を4株発行するなら、300円の対象会社の株式と買収会社の株式4株が等価であることになり、買収会社の1株当たりの発行価額は75円となるので、有利発行となる)、株主総会の特別決議を要する、というものです。

産業活力再生法改正により、会社法上の問題は解決されたということです。

自社株対価TOBを利用することにより、完全子会社ではない子会社化が現金を使わずに実行することが可能となります。また、三角合併が認められていない国の企業を、自社株式を対価に買収することが可能になります。

【リンク】

「「産業活力の再生及び産業活動の革新に関する特別措置法の一部を改正する法律案」の概要 」 [PDF]