企業の義援金についての税務上の取扱い

東日本大震災の被災地に、企業が義援金を送る動きが広がっている。国や県、日本赤十字社に送る例が多いが、企業自身がおカネの配分に工夫を凝らそうとする動きも出てきた。その際、寄附金の損金扱いが窮屈で、せっかくの善意が税の壁に当たりつつある。
(日本経済新聞2011年6月2日5面)

【CFOならこう読む】

「企業が県などの行政機関に寄附した場合は、全額が損金扱いされ非課税。だがヤマトのように公益法人への寄付だと、寄附金の一部しか非課税にならない」(前掲紙)

今日の記事は、正確性に欠けます。認定NPO法人や公益法人向けの寄附金は支出額の全額が損金算入できます。

以下、国税のHPから抜粋します。

「法人が義援金等を支出した場合には、その義援金等が「国又は地方公共団体に対する寄附金」 (国等に対する寄附金)、「指定寄附金」に該当するものであれば、支出額の全額が損金の額に 算入されます。(法法 373)

「国等に対する寄附金」には次の1、2、3又は7に掲げる義援金等が、「指定寄附金」に は次の4、5又は6に掲げる義援金等が該当します。

1 国又は地方公共団体に対して直接寄附した義援金等
2 日本赤十字社の「東日本大震災義援金」口座へ直接寄附した義援金、新聞・放送等の報道機関に対して直接寄附した義援金等で最終的に国又は地方公共団体に拠出されるもの
3 社会福祉法人中央共同募金会の「東日本大震災義援金」として直接寄附した義援金等
4 社会福祉法人中央共同募金会の「災害ボランティア・NPO活動サポート募金」として直接寄附した義援金等(平 23.3.15 財務省告示第 84 号)
5 認定NPO法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費用に充てるために 行 っ た 寄 附 金 ( そ の 募 集 に 際 し 、 国 税 局 長 の 確 認 を 受 け た も の に 限 り ま す 。)( 平 23.3.15 財務省告示第 84 号、平 23.4.27 財務省告示第 143 号により追加。)
6 公益社団法人又は公益財団法人に対し、東日本大震災の被災者支援活動に特に必要な費 用に充てるために行った寄附金(その募集に際し、当該公益社団法人又は公益財団法人 に係る行政庁(内閣総理大臣又は都道府県知事)の確認を受けたものに限ります。)(平 23.3.15 財務省告示第 84 号、平 23.5.20 財務省告示第 174 号により追加。)
7 1から6以外の義援金等のうち、寄附した義援金等が、募金団体を通じて、最終的に国 又は地方公共団体に拠出されることが明らかであるもの」
「東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて」 国税庁 [PDF]

但しこの制度が周知されているかについては疑問があります。

国税のHPを見る限り認定NPOは4つしかありません(「東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて」 国税庁 [PDF])。いくら何でも、復興支援に尽力しているNPOが4つしかない、ということはないでしょう。

日本赤十字社が機能不全を起こしている今、被災者に直接義援金を届けることが重要で、国税としてもその仕組みを用意しているわけですから、もっと声高にアピールすべきです。ただ、税制上の手当てが十分だとは思いません。企業が支出した義援金は、全額税額控除とすべきでしょう。

これはこういうことです。税引前利益が100億円、法人税率が30%の会社が30億円の義援金を支出した場合、法人税額は次のようになります。

全額損金算入方式の場合、

(100ー30)×0.3=21億円

の法人税を納めなければなりません。一方税額控除方式なら、

100×0.3-30=0

となります。

税金として徴収した後、国が被災者を支援する代わりに、企業が直接被災者支援を行うわけですから、税額控除方式が正しいと私は思います。

【リンク】

「東日本大震災に係る義援金等に関する税務上(所得税、法人税)の取扱いについて」 国税庁 [PDF]