バランスシート中心の経営

経営革新はPLからは生まれてこない。PLから生まれるのは改善にすぎず、抜本的に企業体質を変化させるには、トップが主導しBSの構造を変えていくことが不可欠である。
(日本経済新聞2011年8月17日17面大機小機)

【CFOならこう読む】

「たとえば、棚卸資産を劇的に削減しようと目指すとき、単に月末の在庫残高を少なくするだけでは無理である。生産工程での最初のインプットから最終商品のアウトプットまで、全ての部門で合理化、効率化を進め、リードタイムを全体で縮める必要がある。消費者に届くまでの流通在庫や物流への取り組みも忘れてはならない。そうした過程で抜本的な経営革新は生まれてくるものである」(前掲紙)

経営においてバランシートが重要なことは間違いありませんが、BSだけ見ていても経営はできないというのも真実です。より重要なことは、BSとPLとキャッシュフローの関連を理解することです。換言すれば、BSにより投資額を把握し、PLとキャッシュフロー計算書から投資の成果を把握することで、はじめて投資効率の善し悪しを測ることができるのです。

また、知的資産が重要な現代の企業においては、その資産の多くがオフバランスであるため、バランスシートだけ見ていても何もわからないし、何の経営革新も生まれてきません。したがって管理会計上、財務会計上認められていない知的資産のオンバランス化が必要となる場合も少なくありません。その場合、投資成果を測るために、どのタイミングでバランスシートから落としてPLに計上するか(どう償却するか)工夫する必要があります。

こういったところでも、BSとPLの関連をどう見るかが問われるのです。

余談ですが、投資効率の把握という観点から言うと、投資額はあくまで簿価で測定すべきです。何でもかんでも公正価値で評価しようという発想は、経営を正しく見るという意味では有害ですらあります。

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