オリンバス損失隠し

オリンバスが証券投資の損失を隠していた問題で、1990年代に財テクに失敗した同社が保有していた金融商品の含み損は最大で約1千数百億円に上ったことが8日、関係者の話で分かった。
(日本経済新聞2011年11月7日1面)

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「2001年3月期に金融商品の一部についてそれまでの簿価による評価ではなく、含み損を実際の損失として決算に計上する時価会計制度が導入された。同社は損失の表面化を回避するため、当時、付き合いのあった証券関係者らとともに社外の投資ファンドに含み
損を抱えた金融商品を移し替える「飛ばし」を考案したという。
飛ばしには、2000年3月期に同社が300億円を出資したケイマン諸島籍のファンドなど複数のファンドを活用。含み損を抱えた金融商品と、ファンドが発行する債券を簿価で等価交換したという」(前掲紙)

もともとは、含み損を抱えた有価証券の時価が戻るのを待とう、というのがファンドに飛ばした動機だったのでしょう。

含み損を含み損のまま抱えている分には損失補填のためにキャッシュを必要とすることはないのですが、問題となっている買収を行った2006年当時に、何らかの理由で損失を実現させる必要性が生じたものと思われます。

この点、2006年9月に公表された「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(実務対応報告第20号)が公表され、支配下にあるファンドも連結対象となることが明確になったことが影響しているのかも知れません。

損失補填や架空売上の原資を資産取得の際、価格を膨らませることで捻出する、というのは典型的な手口です。取得される資産が固定資産や会社そのものである場合には、減価償却やのれんの償却を通じて損失が徐々に認識されることになります。損失そのものを永遠に「飛ばす」ことは不可能で、経営者もそのことは知っていたはずです。要するに問題先送りですね。

この問題先送り対質はあらゆる日本の組織に見られる傾向で、そういう意味では組織の責任あるポストにあるすべての人が、今回のオリンパスの事件を教訓とすべきです。

経団連会長が、昨日、「トップの倫理観(の問題)」とご立派なコメントを残されたそうですが、日本のエスタブリッシュメントのトップとして、人ごとではなく自己の問題として猛省する姿勢が必要ではないでしょうか。

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