オリンパス、ジャイラス買収に係るFAフィーをどのように膨らませたか

オリンパスの損失隠しの実態を調べていた第三者委員会は6日、調査報告書を発表した。社長以下トップが主導し1999年3月期から損失を簿外に移す「飛ばし」を実行、企業買収などを通じ総額1348億円を穴埋めした。17のファンドをや外国銀行口座を利用する巧妙な手口で隠し続け、「金融商品取引法や会社法に違反する行為だった」と指摘した。再発防止へ、問題処理に加担した取締役、監査役の一新を提言した。
(日本経済新聞2011年12月7日1面)

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第三者委員会の報告書は185頁もの大部で、大変よみごたえのある読み物(?)に仕上がっています。

報告書は、

「国内株式取得額のうち、損失分離先のファンドに流出した716億円に、ジャイラス買収に関連して支払ったワラント及び配当優先株の取得額計632億円を併せた合計1348億円が、損失分離スキームによって飛ばした1177億円の損失に加え、スキーム維持費用等に充当された」

と結論付けています。

このうちジャイラス買収に係るFAフィーをどのようにして632億円にまで膨らませたかについて以下に要約しておきます。

「FAフィーに関する契約内容は次の通りでした。
(1) 基本報酬
 500万ドル
(2) 成功報酬
 対価によって異なるが、例えば、買収価格が10億ドルから25億ドルの場合、その買収価格の5%が
成功報酬となり、そのうち15%が現金補償として現金で支払われる(但し現金補償額については
下限10百万ドル、上限12百万ドルとする)。

上記成功報酬のうち、現金補償の対象とならなかった部分について、買収対象会社の資産を受け継いだ
法人(買収ビークル)の株式オプションで支払う。またこれとは別にワラントが与えられる。

ジャイラスの買収価格は、約9億6500万ポンド(約2063億円)に決定、2007年11月26日に、上記FA
契約に基づき、成功報酬として12百万ドルを支払う(現金補償部分)

2008年2月14日、FA契約に基づき株式オプション契約締結

ジャイラスの資本再編の検討の中で、オリンバスは、税制上の理由から、株式オプション及びワラント
全ての買い取りを決定。オプションの評価額1億7700万ドルとされた(2008年3月31日)。

2008年9月30日、株式オプションに代わり、ジャイラスの配当優先株(発行額面1億7700万ドル)をFA
に発行、ワラントは5000万ドルで買い取る。

2008年11月28日、オリンパスは、取締役会にて配当優先株を5億3000万ドル~5億9000万ドルで
2008年12月中旬に買い戻すことを決定。

その後会計上の懸念が発覚し、買い取り延期。

会計上の問題がクリアになり、2010年3月23日~3月25日 配当優先株620百万ドルで買い取り実行。」
2012年12月6日「調査報告書要約版」オリンパス株式会社 第三者委員会 3[PDF] 50頁~72頁を要約)

簡単に言うとFAフィーは基本報酬5億円と成功報酬2000億円の5%(100億円)であった。通常FAフィーは買収価格の1%~2%であるのに対しこれ自体相当に高い水準であったと言えます。

成功報酬100億円のうち13億円(12百万ドル相当)が現金補償額として支払われる。そうすると株式オプションとワラントの価値は87億円~88億円であるはすです。

それが最終的にワラント53億円(5000万ドル)及び配当優先株620億円に化けた、ということです。

デリバティブが絡み、複雑な構造を敢えてとってはいますが、こんなことはあり得ないということは、誰でも常識的に考えれば気付くはずです。

知らなかったでは済まされません。

【リンク】

2012年12月6日「調査報告書要約版」オリンパス株式会社 第三者委員会 1[PDF]

2012年12月6日「調査報告書要約版」オリンパス株式会社 第三者委員会 2[PDF]

2012年12月6日「調査報告書要約版」オリンパス株式会社 第三者委員会 3[PDF]

2012年12月6日「調査報告書要約版」オリンパス株式会社 第三者委員会 4[PDF]

2012年12月6日「調査報告書要約版」オリンパス株式会社 第三者委員会 5[PDF]