野村證券3000億円の新株発行枠を登録

野村ホールディングスが6日、年度内の公募増資を視野に3000億円を上限とする普通株の新株発行枠を登録した。20年ぶりの新株発行となるが、野村の株価はおよそ25年ぶりの安値圏。逆境下の大型増資を実現するため、ダイリューション(希薄化)という悪材料を段階的に市場に織り込ませようとしている。増資の成否は野村自身の経営はもちろん、株式市場の今後を占う試金石でもある。

(日経ヴェリタス2009年2月8日17面)

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発行登録制度は、証券を発行する際にあらかじめ金額の上限を公表し、その枠内で機動的に発行する仕組みで、これを利用することで、会社の正式な意思決定として新株式の発行を行う予定であることを対外的に表明した上で勧誘行為を行うことができる、予定期間内の発行予定額を発行登録段階で開示することとなるため今後の資本増強策等に関する会社の方針を市場に理解してもらえるというメリットがあります。

社債では多くの活用例がありますが、新株発行ではまれ。最近では、三菱UFJフィナンシャル・グループが昨年12月に実施した大型増資で利用した事例がある程度

(前掲紙)

とのことです。 これを受けて野村HDの株価は9日大きく下落しました。

9日の東京株式市場で、野村ホールディングス(HD)の株価が大幅に下落し、前週末終値比82円安の490円で取引を終えた。終値で500円を割り込んだのは、野村証券時代を含め82年11月9日(485円)以来26年3カ月ぶり。金融危機で業績が悪化している上、新株発行による最大3000億円の公募増資枠を設定したことが、既存株主の利益希薄化につながるとして嫌気されたようだ。

http://mainichi.jp/select/biz/news /20090210k0000m020143000c.html) 赤字補填のための資本増強を株式市場は特に評価しないということでしょう。しかしTier1増強は必須で、種類株発行を定款で規定していない野村の場合は普通株式の発行をする他選択肢はないと思います。野村としてはいずれにしてもダイリューションは避けられないとの判断があるのでしょう。 発行枠登録を利用したのは、

ダイリューションという悪材料を告知することで、業績悪化と株価低迷に不満を募らせている既存株主から大型増資への理解を何とか得たい

(前掲紙)

という意図があるのです。

【リンク】

2009年2月6日「新株式発行に係る発行登録について」野村ホールディングス株式会社

http://www.nomuraholdings.com/jp/news/nr/holdings/20090206/20090206_b.html

平成20年10月27日「新株式発行に係る発行登録について 株式会社三菱UFJ フィナンシャル・グループ(取締役社長 畔柳」株式会社三菱UFJ フィナンシャル・グループ

http://www.mufg.jp/data/current/pressrelease-20081027-003.pdf